母方の祖父のお葬式の数日後、父から聞いた話です。
父がまだ小学校の頃、とても可愛がってくれた親戚のおじさんがいたそうです。
そのおじさんが会いに来るのを、父は毎回楽しみにしていました。
その日、おじさんが訪ねてきた日も、父は喜んでおじさんを迎え入れようとしたのですが、
おじさんは玄関から入ってこようとしません。
お茶も断り、頑なにここでいいから、と繰り返します。
少し妙に思いながらも、父はおじさんを待たせて、自分の父親、私の祖父を呼びに部屋に向かいました。
祖父は自室にいました。
祖父は心なしか、顔色が悪く、どうしたのか、と父が尋ねると、祖父はこういったのです。
おじさんが今しがた亡くなった。
父はそれが信じられず、おじさんが玄関に来ている、という話を祖父に伝えました。
祖父が血相を変えて、部屋を出ていったのを追いかけ、父はそこでふと、思ったそうです。
おじさんは毎回、名古屋から飛行機に乗って父に会いに来てくれていました。
いつも何かしら手土産を持ってきてくれるおじさんが、そういえば、今回は手ぶらだったな、と。
父も急いで玄関に戻ると、そこにいたのは、呆然としている、自分の父親だけでした。
父はおじさんを探しに行こうとしましたが、祖父に強く止められたようです。
私が話を聞いた当時、父はこの事についてこう言っていました。
きっとおじさんは、最期に自分と話をしたかったに違いない。
しかし自分はそれをせず、父親を呼びに行ってしまった。
申し訳ない事をした。
でも、その後もおじさんは何回か父の様子を見に来たのかもしれません。
祖父の家の玄関や階段で、人の気配がした事が何回かありましたから。
煙の霊に見つめられて(母の実家2階)
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