これは父親に聞いた話しです。
私の父親は北海道出身なのですが、
今から60年から70年前の北海道は今以上に雪深く感じられたそうです。
父が子供の頃はまだ各家にはお風呂が無くて、少し距離はあるものの銭湯に入りに行っていたそうです。
疲れた身体を湯で温めることは、距離があるとは言ってもそれなりの楽しみを持っていたと言う話でした。
いつもは兄弟と一緒に銭湯に行っていたそうなのですが、
その日は父だけが遅くなってしまい一人で行く事になりました。
まだ子供だったので、夜に一人で銭湯に行く道はさすがに薄気味悪く感じたそうです。
ですが、もともと父は幽霊だとか心霊現象だとかを全く信じていなかったので、
その不気味な気配のようなものを振り切るように銭湯に向かったそうです。
暗い道を小走りで銭湯に向かったと話していました。
銭湯はだっだ広い脱衣所があって、その奥にお風呂がある感じをイメージして貰えば分かりやすいと思います。
受付の人はおらず、入浴代を箱の中に入れるのみです。
思えば、その日はなんだか薄気味悪い雰囲気が漂う日だったそうです。
脱衣所に入り、急いで服を脱いでいました。
その先のお風呂からザッザーザパーンっと桶で汲んで流す水音が聞こえたと言います。
父は「良かった、他の人が入っているなら安心だ」とおもったそうです。
服を脱いでガラッとお風呂のドアを開けてみると、シーン…。
お風呂に誰もおらずがらんとした雰囲気だったそうです。
薄気味悪さを感じた父は、結局その日はお風呂に入らず急いで着替えをして帰宅したそうです。
後日談ですが、その日父の後に銭湯に向かった友人が行方不明になっており今も見つかって無いそうです。
あの時、父もお風呂に入っていたら行方不明になっていたのは
父だったのかなと考えてしまうのは私だけでしょうか。