「宿直」の夜
セコムなどの遠隔警備サービスがなかった頃、
かつて学校教師には「宿直」という業務があった。
電話番・兼・警備のために毎晩教師が、
最低一人は学校に寝泊まりしていたのである。
寝泊まりの場所は宿直室といい、
ちょっとしたワンルームアパートの一室のような感じだった。
さて富山県旧福光町の石黒小学校の宿直業務は、
夜になってから何度か校内を巡回した後は、
午前0時を過ぎたら仮眠してよい決まりだった。
ある夏の夜、とある新人男性教師が宿直係になった。
彼は室内の台所で夕食を作り、
巡回の時間までテレビを見ていた。
夜の校舎に聞こえる朗読
その時彼はふと、二階のほうから教科書を朗読する声が聞こえるのに気づいた。
こんな時間まで居残りさせられた児童がいるのか?と思ったので、
取りあえず見に行くことにした。
だが階段をトントンと上がっていくと、
急にその声が止まる。
二階のフロアをのぞくと、
どの教室も完全に真っ暗で静まりかえり人の気配はない。
彼は不思議に思いながら階段を下りて宿直室へ戻った。
だがしばらくするとまたも朗読の声が聞こえる。
もう一回二階に行ってみるとやはり真っ暗。
さっきのように全く人の気配はなかった。
後日その教師は先輩教師にその夜の出来事についてたずねてみた。
すると
「自分も何度も聞いているが慣れっこになっている。気にするな」
と返事が返ってきたという。
子供の生き霊?
後日その教師は知り合いの霊能者と言われる人にその話をしてみたらしい。
すると「生き霊」だと言われたそうだ。
子供は大人に比べて魂が不安定だから、無意識に魂だけ肉体を離れる事があるらしい。
そして時々慣れ親しんだ場所である学校にやってくる事があるとのこと。
石黒小はやがて統廃合され、校舎も跡形もなく取り壊された。
しかし、統廃合した先の新しい小学校でも
深夜の校舎にいると、今でも同じような声がするという。
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