札幌市西区の病院
(現在は廃業して跡地は住宅になっています。
住んでいる方の心情を考慮して詳細は伏せさせていただきます)
私がその病院に配属されたのは今から10年ほど前のことでした。
当時で開業して30年ほど経過した病院で、建物も古く、
昼間でもなんとなく薄暗いような雰囲気の病院でした。
しかし、地元の方からはそれなりに人気があり、
外来の待合室はいつも患者さんでいっぱいでした。
賑やかなので、物理的な薄暗さは気にならないような病院でした。
携帯電話は十分に普及していた頃ですが、
やはり高齢者は携帯電話の所持率が低く、
公衆電話が各階に設置されていました。
今回、私が話したいのはこの各階に設置された公衆電話のことです。
その病院は高齢者医療に力を入れており、
入院病棟の半分は慢性期の患者さん向けの病棟でした。
高齢者で慢性的な疾患があり、長期入院ともなると、
いつ、何があってもおかしくはない状態です。
さっきまで元気だったのに、予想外に急変し、
お亡くなりになられることも珍しいことではありません。
これはどこの病院でも同じことが言えると思います。
しかし、そこの病院は他の病院とは違う「あること」が起こるのです。
入院患者さんが亡くなる数日前に、
決まって夜中に公衆電話が鳴るのです。
誰かが受話器を取るまで鳴り続けるのですが、
電話を取ると決まって切れます。
公衆電話にもすべて電話番号が当てられているので、
最初は誰かのいたずらだと思い、
夜中に鳴るのも迷惑なので
これまで何度も電話番号を変えてもらったそうです。
しかしそれでも電話は来るのです。
そして電話が来た数日以内に必ずどなたかが旅立って行きました。
経営陣は医療ミスなどを疑い内部調査までしたそうですが、
不適切な治療やミスなど不審な死はなく、
結局電話と患者さんの逝去の関係は謎のまま、
病院は施設の老朽化と院長の高齢化が原因で閉鎖されました。
あの電話は一体、誰がどこからかけていたのか、
いまだに真相は誰にもわかりません。
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