1.荒れ地に突然現れる一軒家
まだ昭和の時代の話である。
九州の別府と湯布院を結ぶ道には、有名なやまなみハイウェイともう一つ、由布岳の北側を迂回する道路ある。
この迂回道路の方の道沿いには、民家が一軒もない草原地帯がある。
そこにかつて、ぽつんと一つだけ、屋根が見えるポイントがあった。
いつもバイクでこの道をツーリングしていたAさんと親友のBさんは、あれはいったい何なのだろうといつも不思議に思っていた。
農機具などをしまう小屋かと思ったが、付近は畑もないただの荒れ地が広がるだけなので、不可解だった。
ある日、AさんとBさんは、小屋が一体何なのか確認したくなり、バイクを止めて、小屋に近づいてみた。
2.土地の中に埋もれた日本家屋
近づいてよく見てみると、それは小屋ではなくて、日本家屋の二階部分だった。二階の屋根の部分が道路から見えていて、それが小屋に見えていたのだ。
民家も何もないただの荒れ地に、立派な日本家屋がまるまる一軒、埋まっていたのだ。
付近はどこまでも平らな草原地帯で、山崩れや土砂崩れが起きて、家が埋まるような地勢では決してなかった。
地上に頭を出している二階へは、窓から出入りが可能だった。
好奇心が沸いたAさんたちは、家の中に入ってみることにした。
二階は子ども部屋のようで、学習机なども置かれ、生活感があった。
そして、二階から一階へ下りる階段もあった。
階段から下を覗いてみると、階段を下りたところ、一階へと続く空間は、階段の梁まであるような巨大な仏壇で完全に塞がれていた。巨大な仏壇のために、一階へは下りられなくなっていた。
巨大な仏壇は扉が閉まり、一枚お札が貼ってあった。
気味が悪くなったAさんたちは、慌ててその場を立ち去ったという。
3.メリーさんの館との関わり
昭和50年代くらいまで、この日本家屋は存在していたらしい。
現在、この家はなくなっているが、そのかわりに、
家があった近くに2メートル近くの白い御影石の地蔵が建てられている。
そして、驚くべきことだが、稲川氏有名な怪談「メリーさんの館」も、
この埋まった日本家屋の近くにあるらしい。
同じ道路沿いにあるとされる。
メリーさんの館とは、廃屋となった洋館に肝試しで入り込んだ若者が、
そこで大勢の外国人の子どもの幽霊に遭遇する話である。
全国にメリーさんの館と噂される洋館はたくさんあるが、この大分にある洋館が本物らしい。
かつてここの草原で羊を飼っていて、その洋館の玄関には、羊をかたどった面が飾ってあり、
そのためメリーさんの館と呼ばれていたという。
なぜ、この奇怪な日本屋敷と洋館が二つが、お互い近くにあるのかは、謎である。