福岡市と太宰府の間にある山での出来事です。
朝からツーリングを楽しんでいた大型バイクに乗った男性が、
夜更けにその山道を通って福岡市側へ戻る途中で用を足したくなり、
場所を探していたのですが、コンビニなどない山道ですので適当な場所がなかなか見つかりません。
山を越えてしまうまでの我慢だと思っていたところ、左へ大きくカーブした地点の右側に
やや広い空き地があるのに気付き、トイレもない場所で申し訳ないがそこで済ませてしまおうとバイクを停めたそうです。
車などが入れないよう車止めが並ぶ空き地の入り口を徒歩で抜けると、
奥に小さな小屋が見えたので男性はその裏で用を足し終えました。
そこから離れようとすると低いうめき声のようなものが聞こえたので男性は何の音かと落ち葉を踏む足を止め、
そして息を殺し耳を澄ませたところ今度ははっきりと男の苦しそうなうめき声が聞こえたというのです。
場所は裏に広がる林の中などではなく自分のすぐ近くで小屋の中からのようにも思えたとのこと。
ところが小屋は周囲をぐるりと板状のものでしっかりと囲ってあるので中を覗く隙間さえない状態。
誰も入れるはずもないので中からの声はあり得ません。
やはり小屋の中以外のごく至近距離からの声ということと、
小屋の周囲をグルリと回る途中に一瞬漂ってきた腐臭になんともいえぬ気味の悪さを覚え、
慌ててバイクに戻り他の車などほとんど通らぬ真っ暗な山道を下ったのですが、
山を越えて民家の灯りが見えてきた時の安堵感は緊張感でこわばった体が溶けるようで忘れられないそうです。
男性は知らなかったそうですが用を足したその小屋は公衆トイレだったもので、
1990年代に死体遺棄事件が起きた場所なのです。
それ以降は男性が言ったように誰も入れぬよう対策されましたが、建物そのものは残っているという場所です。
人はおろか車さえ少ない街灯もない夜更けの山道で2度耳にした男のうめき声、
その主とは一体何だったのでしょうか。