私の友達にS君という者が居ます。
これは以前S君から聞いたときの話です。
今は結婚し、静岡の方に行きましたが、学生時代、彼は横浜に住んでいました。
彼はバイトは中華街で中華料理のお店を手伝ってました。
休みや暇さえあれば山下公園や氷川丸を見に行ったり忙しいながらも充実していたそうです。
とある夏の終わりでした。
その日はいつも忙しい料理屋も何故かお客も少なくて珍しく後片付けして定時で終わったそうです。
S君は夏休み実家に帰らずにずっとアルバイトをしてました。
次の日から実家に戻るため少し長いお休みを貰ったそうです。
彼はお店を出て家に戻ろうとしましたが、中華街で軽くご飯を食べたりしてブラブラしていたそうです。
休みということもありゆっくりゆったり過ごしていたそうです。
終電も近いので駅に行こうとしましたが、S君はお店のロッカーに定期券を忘れてしまったそうです。
急いでお店に戻るとまだ店長さんも居て開いていて、定期券を取り挨拶してお店を出ました。
その日の中華街はいつもは、お店が終わってもぶらついたりそれなりに人が居たりするのですが、
何故かこの日は人がほとんど歩いていなくて不気味な静けさだったそうです。
何かイベントがあったわけでもなくガランとしていたそうです。
S君はお店を出て、店の小路を通り近道で駅まで行こうとしました。
お店を出てふと急に寒気と視線を感じました。
振り向くと誰も居ません。
おかしいなと思いながらも駅まで急ぎました。
途中の細い路地で後ろを振り向くと縮れた髪の女性の顔が見えました。
女性の顔は青白く、生気のない感じだったそうです。
S君は不気味に思いながらも構ってられないので急いだそうです。
しばらく小走りで走って、人ひとり通れる通路に来ました。
ここを潜り抜ければ駅はもうすぐそこだったそうです。
狭い通路をS君はゆっくり通ろうとした時でした。
たまたまとあるお店の裏の小窓に目が行きました。
自分の身長と同じくらいの場所に。
その窓に何故かさっきの女性の顔が映ってました。
S君はゾッとしました。
そこには人ひとりしか通れません。
S君はとにかく気持ち悪くなり必死に急いで通路を通りました。
通り抜けようとした際でした。
「…この…許さない…」
大分憎しみの篭った女性の声がしたそうです。
S君はおっかなくなり抜けて急いで猛ダッシュしました。
ですが、無情にも終電は行ってしまいました。
S君は恐怖が抜けずに近くに居たタクシーを拾って自宅のアパートまで戻ったそうです。
その後、中華街でのアルバイトが終わった際はそのような恐怖な事は起きませんでした。
ただ、その近道は二度と通ることはなかったそうです。
女性の顔にはS君は全く覚えもなく、怨みも買うこともなかったそうです。
アルバイト先の店長にこの付近で変なことなかったかと聞くと、
「この土地は火事があったり死んだり色々な事があるからいちいち覚えてられないよ。」と言われたそうです。
S君が見たのは過去に事件があり亡くなった人だったのか?
お盆明けということもあり霊が来たのか?
それは今となってはわかりません。
ただS君は言います。
女性の顔を見たとき目が真っ黒でドス黒買ったそうです。
ずっと見ていたら吸い込まれそうな恐怖を覚えたそうです。
そんなS君の体験した怖い話でした。