会社の人達から
「あのホテルの101号室はヤバイ」という噂は聞いていました。
「出るよ」「私も見た」等です。
仕事で宿泊するホテルで幸いにして今まで、
この部屋には泊まった事がなかったのですが、
一人で出張の仕事が入り、このホテルに宿泊する事のなった時、
ついに「101号室」のルームキーを渡されました。
他の部屋は空いていませんか?と、それとなく
「その部屋はダメでしょ!?」と言外に匂わせたのですが、生憎、満室だとか。
私は全く鈍感で霊感もまく、お化けらしき物は視た事もありません。
ですから「こう言う事は気の持ちよう。私は大丈夫」
と思いながら眠りに就きました。
一度寝たら朝まで目が醒めない体質なのですが、何故でしょう。
いきなり覚醒するように目醒めてしまったのです。
カーテンは薄かったですが、
まだまだ暗く陽は昇っていませんでした。
今でも自分の意思だったとは思えないのですが、
私は上半身だけ起こしベッドの上に座りました。
すると、丁度、目の前、ベッドの足元側の目線の高さに鏡があります。
私は鏡の中の自分の顔を観ました。
朧気だったのですが一番初めに目が合った時は自分の顔だったと思います。
どれくらい鏡の中の自分を見ていたのかは分かりません。
その顔が少しずつ鮮明になり、自分とは明らかに違う顔が
「映る」というより浮かび上がりました。
頭から水をかぶった程ずぶ濡れの女性で、目を合わせたまま、
鏡の中から手を伸ばしてくるのです。
滴が滴り落ちる手が、自分に届きそうになった時に、
ようやく私は悲鳴を上げました。
その瞬間、鏡の中の女性は消えて私も我に返りました。
時計を見ると5時。
夏場の熱い時期でしたが、それからは、
もう眠れず布団の中でガタガタ震えました。
以前、西海橋から投身自殺した女性がいて、
前夜に宿泊していたのが、このホテルの101号室だと聞きました。
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