神隠しとは
ある日、なんの前触れもなしに人が行方不明になってしまい全く見つからなくなってしまうという現象を神隠しと呼びます。
多くは山や森などで忽然と人が消えてしまう為に、神の仕業ではないかと言われてきたことに由来しそう呼ばれるようになったようです。
祖母の実家は山奥にあり、隣の家と言えば隣の山というくらいの田舎でした。
その町は古くから妖怪やつちのこなど、様々な伝説が残されている土地であり、これは身内の葬儀のためにその町へ行ったときの話です。
一本しかないはずの道で迷子
葬儀も終わり、その日は母と祖母と共に叔父の家に泊まりました。
翌朝、都内で育ったために田舎の自然を満喫しようと思った母は、山を徒歩で下り散歩へと出かけました。
道は一本です。
他の親戚も後から買い出しのために母の後を追ったのですが、母は道を下った先にある商店にはおらず、すれ違うこともありませんでした。
いったいどこまで行ったのか、もしかしたら転落事故にでもあったのではないかと、皆が騒ぎ始めたときのことです。
母が泣きながら帰宅しました。
いったい何があったのかと言うと、気が付いたら知らない神社にいたというのです。
しかし、この辺りの神社は歩いていくには遠く、どう考えても辿り着けないような場所でした。
そして先ほども書いたとおり、道は一本であり、あたりは木々が生い茂っているので迷うようなところはありません。
どうやって帰宅したのか母に問うと、親切な男性が道案内をしてくれたとのことでしたが、そこで祖母が口を開きました。
生と死の境目
実は祖母も昔、あるはずのない神社へ辿り着いたことがあったそうです。
そして、母同様に男性に案内され帰宅することが出来たというのですが、それは知らない人ではありませんでした。
その男性とは、祖母の息子ではあったものの、祖父の子ではなかった為に県外へと養子に出された男性だったのです。
しかし彼はその時既に戦争で亡くなっており、そこにいるのはあり得ないことでした。
もしかしたら、あの神社は生と死の境目であり、道標のような役割を持っているのかもしれません。
身内の間では母が祖母に似ていたため、彼が間違えてしまったのではないかと話題になりましたが、
もし彼が案内してくれなければどうなっていたのでしょうか。
私もそろそろあの時の母の年齢へと近づいているだけに、帰省するときは気を付けなければと思っております。