友人から有名な心霊スポットがあるからちょっと行ってみようぜ!
という軽いノリで誘われ、朽ち果てた廃トンネルへ向かったときの話です。
入り口には寄せ集めたかのような廃材や廃木材が積み上げられ、
今まで見て来た廃トンネルのようながっしりとした塀や有刺鉄線等で塞がれているようなことも無く、侵入は容易でした。
しかし、ぽっかりと朽ち果てた廃材の中から覗き込むトンネルの中は、
真っ暗でさらに吹き込んでくる風は生暖かいようなとても嫌な感じがしました。
「おい、せっかく来たんだから入ってみようぜ!」
という友人の声に、私は
「いや・・・これはちょっと・・・いやだな・・・」と答えました。
「なんだよ珍しいな。いっつも一番槍で特攻隊長のように心霊スポットに突っ込んでいくのに・・・。」
と笑ながら言うのですが、そう言いながら友人もトンネルの中へ足を入れようとはしませんでした。
何でも、なんというか・・・危ないという気持ちと言えばいいのでしょうか?
これは入ったら絶対に戻ってこれないようなそんな気がしたのでした。
そんなこんなで入り口で手をこまねいていると、
「カタン・・・カタン・・・」とトンネルの中から音が聞こえてきました。
「何だろう?水が落ちる音かな?」
そう思い友人がトンネルの隙間からライトを入れて中を照らそうとした刹那でした。
急に友人は悲鳴を上げ、尻もちをつきそしてそのまま地面を這うようにして逃げ始めたのでした・・・
「おい、どうした?」と聞いてみると・・・
「掴まれた!腕つかまれたんだよ!!」
と半狂乱のようになって友人は言うのでした。
故に私は友人を車に乗せてそのまま近くのコンビニまで車を走らせました。
コンビニの白い光を見て少なからず落ち着きを取り戻した友人の腕を何気なく見てみると、
そこには泥がべったりとくっついてました。
そしてその泥には、まるで人間に掴まれたような跡(手形)がびっしりと、ついていました。
あのトンネルは当時手彫りで掘られたとの話があります。
故にかなりの人数が落盤事故で犠牲になったらしいです。
そしてその死体は人柱としてそのままトンネルの壁に塗り込まれたとのことです。
あの時友人の腕を引っ張ったのは一体何だったのでしょうか・・・。