【タクシー怪談が生まれたと囁かれる場所】
京都市北区にある深泥池は、読んで字のごとく池の底に泥が何層も蓄積していて、
古い池で長い歴史があるためか、木々に囲まれ昼間でも鬱蒼とした雰囲気の池です。
ここは怪談好きでなくとも何となくその概要を知っている、
『タクシー怪談』発祥の地とも言われています。
タクシー怪談は全国に点在するようですが、大体以下の通りです。
深夜、タクシー運転手が乗客を求めて車を走らせていると、
人気のない場所に一人でぽつんと、若い女性が立っているところに遭遇します。
こんなところに…と怪訝に思いながらも、運転手が車を停めて乗せるも、
女性は目的地を告げない場合が多く、告げたとしても『〇〇病院』だとか、
山の中にある『〇〇霊園』だとか、およそそんな時間に何の用事があって、
一人でタクシーで向かう必要があるのかわからない場所だそうです。
目的地を具体的に告げずに、『その信号を右に曲がって下さい』など、
乗ってきた女性の指示に随時従い運転させられるというケースも多いようで、
最終的な落ちは何通りかあり、いつまでも目的地を告げずうつむいている女性にしびれを切らし、
運転手が振り返ると女性が消えていて、後部座席がぐっしょり水で濡れていた、というものと、
女性が『ここでいいです。ありがとうございました』といって、自ら降りていくケースがあります。
【帰りたかった女性】
深泥池で有名なタクシー怪談は後者のケースで、ある家の前でタクシーを停め、
『財布を取ってきますので』と言って、女性が車から降りていきます。
待てど暮らせど女性が出てこないので、家のチャイムを鳴らすと、
中年の女性が出てきて、タクシー運転手がさっきまで乗せていた女性のことと、
運賃の話をすると、最初は怪訝な表情だった女性が、
『それは本当なのですか』と言って涙ぐみます。
聞けば、その家で亡くなった娘さんに特徴がぴったりで、
家ではまさに彼女のお通夜の最中で、
タクシーは亡くなった女性が家に帰りたかったのか、自宅まで導かれていたというものです。
新聞にも載ったほど有名な実話として、今も怪談好きの間では語り継がれています。