墓場に佇む女性と目が合った時に(京都市内の大学構内)

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私は京都市内の大学に通っていました。

京都というとお寺がたくさんあるイメージですが、その大学もお寺に隣接していました。

入学当初は気づかなかったんですが、大学の奥、正門からずっと離れたところにお墓の敷地がありました。

大学が作られる前からあったお墓だそうで、足利尊氏といった歴史上の人物や、様々な著名人が眠っていると聞きました。

裏門からお墓までそのまま行けるようになっていて、時々お墓参りに来た様子の人たちが大学敷地を横切っていくのを見ました。

私がその女性を見たのは、2回生の夏休みのことです。

木々の青々とした葉が真夏の日差しに透けて、窓を閉め切っていても蝉の声が聞こえるほどの、まさに夏真っ盛りの日でした。

夏期の特別講習があって、私は他学部の講義を受講していました。

その学部棟には普段めったに行かないので知らなかったのですが、ちょうどお墓に隣接するように建てられていました。

そのため、私が座った窓際の席からは、お墓の敷地内が丸見えになっていました。

敷地の真ん中付近にあるお墓の前に、数名の家族らしい人たちと、お坊さんがお経を唱えている姿が見えました。

そういえばこの学部棟に入るときにお線香の香りがしたっけな、もうお盆なんだな、とぼんやりと思っていたのを覚えています。

ふと視線をずらすと、その家族から数メートル離れたところに、一人の女性の姿が見えました。

太り気味の体つきをした、地味な服装の女性でした。

真夏なのに長袖のコートを羽織っていて、長い髪が背中の半ばまで伸びていました。

その女性は先述の家族のほうを見つめているようでしたが、まるで仲間はずれのように、ぽつん、と佇んでいました。

なんとなく違和感を覚えてその女性を眺めていると、不意に彼女が振り返りました。

顔が真っ赤に塗りつぶされていました。

目も鼻もない、ただ赤いだけの顔でした。

表情なんてわかるはずもないのに、なんというか、笑っているようにも怒っているようにも感じられました。

気づいたときには、私は病院のベッドの上でした。

付き添ってくれていた大学の事務員が言うには、私は講義の最中に突然けたたましく笑って失神し、救急車で運ばれたそうです。

医者からは、何らかの精神的な疲労によるヒステリーではないか、と言われました。

その日のうちに大学から連絡を受けた両親がきて、私の様子を見て尋常でないと感じたらしく、そのまま実家に帰りました。

夏休みが終わるまで実家で過ごし、その後、両親の心配を振り切るように大学に戻りました。

その後は何事もなく4回生まで過ごし、無事に卒業したのですが、あの女性の正体は結局わからずじまいです。

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