一年前の事です。
私はアニメ好きの友達のU君に7月の終わりに秩父に行かないかと誘われました。
それは以前アニメや劇場版で「あの日見たあの花の名前を僕達はまだ知らない。」の舞台が秩父でした。
私は最初は気乗りしませんでしたが、U君から勧められて見てハマりました。
丁度その時期は休みが取れることになったので関東近辺の旅行を兼ねて行く事に決まりました。
初日は東京や千葉に、二日目は横浜に泊まり、3日目にあの花の舞台の秩父に向かいました。
U君の走らせた車は秩父橋という場所に到着しました。
主人公の宙海仁太達が出てくる場所でした。
ファンの人達らしき人も結構いて写真撮影したり話したりしました。
結構いい高さで景色も良く感動でした。
その後、羊山公園や、定林寺、公園や線路沿い等作品に出た場所はほとんど向かいました。
いつの間にか夕方になり、食事を済ませて、埼玉の仮眠宿泊できる銭湯に向かうのみでした。お金も浮かせるために。
U君は「悪い。秩父橋の夜の景色を見たいし撮影したりしたいから付き合ってくれ。」と言われて私は従い再び昼間に来た秩父橋に向かいました。
夜で暗く、昼間の暑さは多少和らぎました。
人は全くいなくて、U君はブログや知り合いに見せる為に撮影してました。
私はふと何故かこの時に背筋に感じたことのない冷たさというか寒気を覚えました。
暑い夏なのにやたら背筋が寒かったです。
特に冷たい風があったというわけでもなく雨も降ってません。
おかしいなと思い、秩父橋の付近のベンチに座り、スマホを弄ってました。
すると「ホホ…」と女性の声が耳の辺りに聞こえてきました。
私は驚いて立ち上がりバッと振り向き周辺を見回しました。
声は間違えなく聞こえました。が、見回しても誰も居ません。
おかしいなと思っていた時に、U君が来て「今度は階段付近を撮影したいから行こう。」と言われました。
秩父橋の脇に階段があり、その場面も作品で出てきました。
昼間も行きましたが、夜で暗いため慎重に降りて足を踏み外さない様に降りました。
U君は撮影し、「悪いが階段に上るからスマホで撮影してくれ。」と彼のスマホを渡されました。
ここでも私とU君以外誰も居ません。
私はU君に確認し撮影しようとしました。
が、スマホの画面を見たときに暗いはずなのに、何故かU君の左の二の腕あたりが明るい。
白いもやみたいなものが掛かってるというかまとわりついている風に見えました。
変だなと思いました。
「速く撮影して!」と言われてボタンを押して取りました。
私は取った画面を見て言葉を失いました。
U君の腕には白い女性のような手と黒髪で短い女性の顔の輪郭が写っていたのです。
私はU君を呼び画面を見せました。
「そんなわけないだろう!」と笑いながら言っていたU君ですが、
私の撮影した画像を見て、無言になり、その写真は即座に消去しました。
二人で早足で車に戻り秩父橋を去りました。
その後特に何もありませんでした。
が、後日秩父で撮影した写真をU君が現像してくれたので取りに行きました。
その時にU君は一枚の写真を見せてくれました。
それは、昼間秩父橋の付近をU君が撮影した写真です。
秩父橋の植え込みの辺りに白い女性の顔が首だけ写っていたのです。
私は背筋が凍りました。
U君はすぐさまお祓いしその写真を処分手放したそうです。
私があの夜見た物は秩父橋周辺にいた霊だったのでしょうか?
今も思うとあの声が耳元に残りますし、背筋の冷たさの感触は覚えています。
そんな秩父で体験した怖い話でした。