私が中学生の頃、通学路の途中にもう使われていない産婦人科医院がありました。
窓は破れ、カビの匂いが漂って、雑草も生え放題で誰も管理していないようでした。
何よりも、古い和風建築の街並みの中に一つだけ洋館のような作りで、周りから浮いていて異様な雰囲気を漂わせていました。
ある日部活で帰りが遅くなり、一人でその病院の前を通ったのです。
すると、どこからともなく「オギャーオギャー…」と赤ちゃんの泣き声がしました。
私はギョッとして病院の方を見ました。
何も変わった所はなく、ホッとして前に向きなおると、死んだ赤ちゃんを抱いた看護師さんが立っていました。
私は悲鳴をあげながら逃げました。
必死で走り、後ろを振り返る余裕はありませんでしたが、看護師さんの異様な形相は間違いなくこの世のものではありませんでした。
こんな体験をしたのは自分だけだと思い、学校では特にその病院については話さなかったし、話題にのぼることもありませんでした。
しかし、部活で仲のいい友達とその病院の前を通った時、実は…と友達が口火を切りました。
友達によると、その病院は昔から違法な堕胎手術をしており、その界隈では有名だったそうです。
生まれたくてもこの世に生を受けることができなかった赤ちゃんの無念の思いが呪いとなって、このことを話題にすると呪われるという言い伝えがあるそうです。
今日も日が沈みしばらくたった頃、小中学生たちの恐怖の悲鳴が聞こえてきます。