私は小さいときから霊感が強いほうでした。
よく金縛りにあったり、母や姉には見えない人に挨拶をしたりと、
家族は私を不思議な子扱いしていました。
生まれは母の実家の岩手県なのですが、三歳のときに父の実家がある秋田県に引っ越してきました。
もちろん小さかったのでそんなに記憶はありません。
父の両親、姉二人と七人で暮らしていました。
隣の家には老夫婦二人暮らしで、おばあさんもおじいさんもとてもかわいがってくれていました。
そんな私も小学生にあがり、次第に隣の老夫婦の家に遊びにいくこともなくなりました。
すっかり存在すら忘れるくらい、顔を合わせる事もなくなっていきました。
そしてある夏の夜、洗面所で鏡を見ながら歯磨きをしていると、白い手が写りこんできました。
洗面所の鏡にはお風呂場の入り口が写るのですが、
その風呂場の入り口から手が伸びていたのです。
びっくりして振り向いたのですが、何もなく…
気のせいだと思い、また歯磨きを続けていると、白い手がさらに伸びて見えました。
感覚的にひっぱられそうな感じがし、怖くなって母を呼びました。
『誰かいる!』そう言って母に見てもらったのですが、案の定だれもいません。
ですが泣いて怯える私をみて、母も姉たちも
『またあんた見たんだよ、いつものことか』となだめられました。
私も見るのは慣れていたのですが、引っ張られそうな感覚は初めてで少し気にしつつ、その日は休みました。
翌日、早朝に見覚えのない年配の女性が訪ねてきました。
聞くと、隣の老夫婦の娘さんでした。
おばあさんが昨日なくなったので、と通夜の案内を持ってきたのです。
それを朝食中に家族で話をしていると祖母が
『そういえば隣のおばあさん、お前が来たときにものすごくかわいくて、
養女に欲しいって何度も頼みにきていたっけな。
昨日見たのはおばあさんの手だったんじゃないか?連れて行きたかったんだよ』といわれました。
おばあさんのことは好きだったし、亡くなったのもショックでしたが、
あの世に連れて行かれそうになったのかと思うと、今でも怖いような、切ない気持ちになります。