もう十年ぐらい前のことか、小学生のある夏に福島のじいちゃん家に行くことになった。
2年前ぐらい前に親に連れられて福島のじいちゃんの家に行ったことがあったが
もうじいちゃんとばあちゃんの顔なんて忘れていて優しかったことと、
いっぱいお菓子が食えたことぐらいしか覚えていなかった。
そんなことを思い出しつつ新幹線の旅に出て福島のじいちゃん家についた、
俺は期待通りに出たお菓子ばっかり食っていたが昼から親戚のたかちゃんが来て
一緒にじいちゃん家の近くの田んぼで遊ぶことになった、どうやら田んぼでいろんな生き物が
捕まえられるらしい、家の庭で飼われていたザリガニもどうやら彼が捕ったものらしく、
家のザリガニよりもっと大きいやつを捕まえてやると言ってはりきっていた。
その割には何か名前もわからないような虫やオタマジャクシのようなものばかり。
いてなかなかお目当ての巨大ザリガニは見つからず。
時間もどうやら2時間ぐらい過ぎたかもしれない、
都会育ちの自分は慣れない田んぼにヘトヘトになっていた。
そんな中ふと、遠くまでずうっと広がる田んぼを眺めてみると、
太さも長さもちょうど細見がちな父さんぐらいはある
一見煙のようだがはっきりと輪郭はある白い「なにか」を見つけた、
ただの煙ならさして驚きはしなかったが
あれは違う、よくよく見てみるとくねくね動いている、
その動き方も風に揺られるようなものではなく
なにか生きているようで薄気味悪かった、怖いもの見たさで確かめようとして近づいて行ったが
やけに距離の縮まりが早いのである、しばらくして自分は「ある事」に気が付いた、
”向こうからも近づいている” 途端に自分の鼓動が早くなるのを感じ、
晴天の真昼間にいるくせにまるで夜中にトイレに行ってるような気分になった、
たかちゃんにおぼつかない声で
「白いのが、白いのが!」と情けない声と表情で助けを求めると、
すぐにたかちゃんは何かを察したらしく
「目をつぶってじっとしてろ!」って言った後、
俺のほうに近づいて自分の手を握り、田んぼから離れたところまで引いて行ってくれた。
その後駆け足で家の庭先までもどってたかちゃんに事情を聞いてみると、
「くねくね」っていう地元ではよく知られたお化けだったらしい、
楽しい気分で遊びたいから、たかちゃんはあえて自分には言わなかったらしく何度か自分に謝っていた。
~十年たった今でも田んぼというと、自分の中ではいまでもこのイメージしかない~