これは私の兄が実際に体験したことです。T県、T市、O池の話です。
地元でも有名な心霊スポットである人口池ですが、その歴史は古く江戸時代からあります。
池の名前は蛇に関していて、その由来は定かではありませんが昔から大蛇がでるとの噂があります。
地元の小学校の応援歌にはいつからか、
『大蛇さま 七周まわってもうすには いつも白組 勝ち勝ち』
とまるで池を周回すると大蛇さまがでるような歌詞があったそうです。
ある日友達がやってきてしこたま酒を飲んだ兄はつぶやきました。
O池を七周してみようと。
池の周りは散策路になっていて、きちんと道がありますが、
それでも一周四十分はかかるので、七周するには朝までかかります。
最初は嫌がっていた友達を無理矢理連れ出して、兄は夜のO池へと入りました。
懐中電灯ひとつきりでは夜の闇は深すぎました。
さっきまでバカ騒ぎしていた兄たちは、まったくしゃべらなくなりおそるおそる散策路を進みました。
まずボートハウスへ向かう右回りで行こうと、池を左手に見ながら坂道をくだっていきます。
友達のひとりが立ち止まりました。
左手には別の道があって、小高い道の終点には休憩所があります。
気分が悪いと屈んでしまった友達を見て、兄はぞっとしました。
休憩所は近所の方が自殺した、ちょうどその場所だったんです。
そんなことと知らずに、気分の悪い仲間の肩を抱いて、友達は休憩所まで運んでいきます。
休憩所は明かりもなく、兄は気味悪そうに懐中電灯の光で休憩所を照らします。
ふと柱に落書きがあるのが見えました。懐中電灯で照らしてみると……
『お前も死ね』
「うわああ!」
「ど、どうしたんだよ?!」
「椅子が塗れてる」
確かに椅子はぐっしょりと塗れていて、床も何かが這ったように黒く塗れていました。
気分が悪い友達はそこに残して、兄たちは周回を散策しました。
杉が群生するあけた場所が右手に見えました。
昔防空壕として使われていた穴のような物が昼間は見えます場所です。
ふと足音がひとつ増えてることに兄は気づきました。
休憩所にいた友達が追いついたんだろうと、
兄は気にすることもなく黙々と七周を終えました。
何だ、何もなかったじゃんと兄たちは笑いながらうちへと戻ってきましたが、
気分の悪かった友達がいっこうに戻って来ません。
兄が携帯に電話すると、友達はずっと休憩所で寝ていたと言いました。
ではあの足音は誰だったんでしょうか?
あれから兄はO池には近寄ろうとしません。
※すみませんが近所なので場所の名前は伏せました。
深夜に住宅地に入ってくる方が多く、近所の犬が吠えて大変なので。