見知らぬ兵隊からの伝言~栃木某所

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これは、私の知人の幼い頃の体験談です。

彼は栃木県の某市に生まれました。

昭和30年代と言えば、まだ、大東亜戦争の記憶も色濃く、豊かとは言えない時代でした。

それでもみんな一生懸命に生きていました。

彼の家は、両親に兄弟5人の大家族。小さい借家でしたが、賑やかで楽しい家庭でした。

隣の家には母方の祖母が住んでいました。

彼はとてもおばあちゃん子で、毎日のようにおばあちゃんの家にあがりこんでいました。

ある晩の事です。地鳴りがして、徐々に揺れを感じました。地震です。

結構揺れた記憶があります。被害はありませんでした。

すると玄関をノックする音がしました。

おばあちゃんが、心配して見に来たのかな?と思い、彼はいち早く玄関にいきました。

ドアを開けると見知らぬ軍服を着た、若い青年が立っていました。

「あのー、どちら様ですか?」彼が尋ねると、軍人さんはニッコリ笑って「お母さんを頼むな」そう言って、フッと消えたのです。

びっくりして、玄関の外を見回しましたが、誰もいません。

夢でも見たのか?しかし、確かにそこに軍人さんがいたのを見た。

急に怖くなって彼は家族のいる居間に戻り、今見た出来事を話しました。

しかし、誰も信じてはくれませんでした。

その日からなん日かして、おばあちゃんの家に上がり込んで遊んでいました。

その日、おばあちゃんは、昔の写真を整理していました。

ふと、1人の青年の写真に目がとまりました。

(あっ!あの時の軍人さんだ。)

彼は咄嗟におばあちゃんにこの間あった話をしました。

おばあちゃんの旦那さん、つまり、彼のおじいちゃんにあたりますが、23歳の時、徴兵され出兵していました。

おじいちゃんは、その戦争で敵に撃たれ戦死しています。

幼い娘と身重の妻を残して。

幼い娘とは、彼のお母さんの事です。

「お母さんを頼むな」あの言葉は、幼かった娘を残して戦死した父親としての最後の願いの言葉だったのでしょうか。

とても不思議な体験だったと、彼は言っていました。