【ブランチの物件紹介に憧れて】
まだ私が小学生の頃の話です。
群馬県に住むおばあちゃんの家の近くによく遊びに行っていました。
夏休みになって、いとこと共におばあちゃんの家に遊びに行くと、近所に空き家がありました。
「あれ?こんなところに空き家あったっけ・・・?」
「前からあったじゃん」
「そうだっけ・・・?」
昔から行っていたおばあちゃんの家ですが、
空き家がある認識はありませんでした。
【面白半分に】
なんだか薄気味悪い出で立ちの空き家に、
私は近寄ることもできなかったのですが
2つ年上のいとこのM、5つ年上のいとこのAは空き家に入ろうとしていたのです。
「やめようよ、帰ろうよ」
私の訴えに耳を貸すことも無く、2人は施錠されていないドアを開きます。
「誰かいますかー!?」
大声で叫ぶA。
部屋の中から返事はありません。
部屋の中は昼間にも関わらず薄暗く、薄気味悪くて私は中を覗くだけで精一杯でした。
するとMが
「そうだ、あれやろうよ、ブランチの真似!」
と言い出したのです。
当時、ブラン娘に憧れていたMが、ブランチでやっているお宅紹介の真似をやりたいと言い出したのです。
「面白そうじゃん、やろうぜ。それっぽくなるようにビデオ持ってくる」
そういってAがビデオを持ってきたのです。
【ブランチの真似】
早速、家から入るところから始めます。
「今日はこの物件にお邪魔したいと思います!」
「おじゃましまーす」
Mはブラン娘になったつもりで紹介していきます。
Aはカメラマンです。
私は薄気味悪い部屋の中がただただ怖くて、
ついて行く事もできず、家の外で待ちました。
それから何分経ったのでしょう・・・
2人は楽しそうに笑いながら出てきました。
「いいの撮れたよ。ブランチみたいだった!早速VTR見ようよ」
そう言っておばあちゃんの家に戻りました。
【ビデオに写っていたもの】
「ねえ、さっきブランチの真似して隣の空き家お宅紹介してきたから見ようよ!」
Mが家にいた大人に声をかけ、TVの前に集合させます。
「私、上手にリポーターできたよ」
「では、再生~」
さっき撮って来た映像が始まります。
「今日はこの物件にお邪魔したいと思います!」
ブランチさながらのMの演技。
大人たちが笑います。
「おじゃましまーす!」
「はいどうぞ」
・・・え?
今の、誰の声・・・?
あの空き家に入ったのは、MとAだけです。
Aはカメラマンなので声は出していないとのこと。
それにハッキリとした声ではなく、かすかに聞こえるような声。
私は怖くて
「もう切って!見たくない!怖いよ!」
と訴えましたが、大人は見たがります。
「そうやって大人をからかって~。おばけごっこかい?」
MとAは「うそ、おばけの声なの?見たい見たい!」
と映像を止めようとしません。
そのまま映像は続きます。
「1階はとても広いですね~!」
「ありがとうございます」
また声が聞こえます。
「2階も見てみましょう」
「どうぞ狭いところですが」
姿の見えない相手が返事をします。
「2階も素敵ですね。日当たりばっちりですね!」
「ありがとうございます」
やがてMが家を出ようとします。
「今日はありがとうございました!失礼しまーす!」
「ちょっと待て」
ハッキリとした声でした。
そして一瞬ですが、男性のような影が映っていました。
TVの前で、大人も子供も凍りつきました。
その後、そのVTRは2度と見ることはなく、
近くのお寺に事情を話し、引き取ってもらいました。
問題の空き家はというと、
10年経った今もまだ残っています。
誰も住むこともなく、あの日のまま・・・
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