私は個人学習塾を運営しています。
その生徒の体験談です。
当時高校二年の女の子で、真面目だけが取り柄だと自分自身で口にする生徒でした。
実際中学三年間は皆勤だったそうです。
高校に入ってからも皆勤で、塾の方も週三回きっちりと勉強してくれて、休むことはありませんでした。
その生徒が9月末に塾を初めて欠席しました。
一週間分、塾を休み、その間学校もずっと休んでいたそうです。
一週間後に塾にやって来たその女の子に対し、どうしたのと尋ねると、
信じられないかもしれないけど本当なんですと言って、話してくれました。
お彼岸に父と母と私の三人でお墓参りに行ったんです。
何度も行ったことがあるお墓なのに、その日は何となく雰囲気が違ったんです。
いつの間にか、寒さで体が震えているんです。
でも父はまだまだ9月は暑いなあと言っていました。
一体どうしたのかと考えていると、突然耳元で囁く声が聞こえたんです。
助けてぇ、助けてぇ、と確かに聞こえてくるんです。
耳をふさいでも聞こえてくるんです。
お墓掃除をしているとき、お参りをしているときも助けてぇという声は途切れませんでした。
ただでさえ体調が悪く、寒気がしていたので、いつしか抵抗する気持ちも失せていました。
帰宅途中のことは記憶にはありません。
家に到着し、体温を計ると四十度近い高熱でした。
この熱のせいで寒気がしたんだ、ゆっくり休んで熱を下げないと、そう考えて眠りにつきました。
ところが翌朝になっても熱は全く下がらないままでした。
皆勤は途切れて、病院へ直行です。
どうやら風邪だろうね、寝てれば治るよとお医者さんに言われました。
それでもやはり熱は全く下がりません。
四十度近い高熱が3日ほど続いた翌朝、母の妹が偶然、我が家を訪れました。
幼い頃とにかく可愛いがってくれていた叔母です。
叔母は私の話を聞くと表情が一変しました。
すぐにそこに正座しなさいと、私を座らせました。
両手を握りしめて、合掌の状態にさせて、絶対に離したら駄目よときつく言うんです。
そして大きな声でお経を唱え始めたのです。
私の震えはどんどん激しくなり、顔面から大量の汗が流れ続けます。
すると耳元でまた声がしたんです。
「ありがとう、助けてくれて。」
その声を最後に、また記憶がありません。
でも次に目覚めたときには全くの平熱に戻っていました。
叔母さんは、何となく嫌な予感がして、京都に来てみたの、と言ってました。
霊は強い心を求めることが多く、あなたの心の強さに、きっと惹かれたのねと言って帰っていきました。
冗談さえ言わない生徒からの話だっただけに、私は今でも忘れられません。