私の地元のコンサートホールは1500人くらいの人が収容でき、
様々なイベントが盛んに行われている住民たちの憩いの場です。
そんな楽しくて明るいホールで、あんな恐怖体験が繰り広げられるとは思っていませんでした。
当時中学生だった私は、吹奏楽部でトランペットを担当していました。
夏のコンクールを控えていたので、いつものように件のホールで合奏を始めました。
その時少し不審に思ったのは、外は30度を超える真夏日だというのに、
ホール内、特に舞台上がヒヤッとしているのです。
舞台上はスポットライトが当たっているぶん、いつも蒸し暑いものです。
しかし誰も他にそれを指摘する人はいなかったので、私の気のせいだろうと思い合奏に集中しようとしました。
演奏が始まっても、どうも舞台袖から冷たい風がスッと何度も通ります。
明るい舞台から見ると舞台袖は闇に包まれていて、古びた幕の奥にある暗闇はなんとも不気味に見えました。
すると、集中していなかった私は顧問に先生に一喝されてしまいました。
一言怒られて反省して楽器を口に当てると、ホルンを担当していた部長を務める友達が突然倒れました。
先生は慌てずにその子を医務室に連れて行くように指示して、何人かの部員とその子は舞台袖に消えました。
合奏を再開しようとすると、驚くべきことに次々と部員が倒れていったのです。
それは、集団パニックという現象でした。
実はその後わかったことですが、最初に倒れた子とその子に付き添った子達も
舞台袖で訳のわからないことを口走りながら倒れていたのです。
舞台袖の暗闇に、何かが潜んでいたことは間違いありません。
その日の夜、顧問の先生はひっそりと8年前に交通事故で亡くなった吹奏楽部員のことを思い出し身震いしたそうです。