「幽霊」と聞くと、廃墟などの心霊スポットや夜中の公園、
墓地などで出てくるというイメージがあります。
しかし、身近な場所でも幽霊が見えることがあります。
小学生の頃、私は天窓のついた寝室で寝ていました。
いつもは二段ベッドで弟と一緒に寝ていたのですが、
ある日、弟が友達の家に泊まりに行き、自分1人で寝ることになりました。
その日は、天窓から満月が綺麗に見えたので、しばらく窓越しに夜空を眺めていました。
そろそろ寝ようかと思った矢先、急に視界に覆いかぶさるように黒い物体が降ってきました。
当時小学生であった私は、すぐに視線を外し、布団に伏せました。
そして、恐る恐る顔を上げてみると、なんと二段ベッドのハシゴのそばに、
長い髪をした女性が立っていたのです。
あまりにも鮮明に見えたので、最初は本物の人がいるのかと思いました。
しかし、その考えはすぐさま覆りました。
驚きで一瞬目を閉じた瞬間、その女性は寝室の入り口まで移動していたのです。
足音も何もしなかったので、ここで「この人は幽霊だ」と感じ、震えてしまいました。
声を出して両親に助けを求めましたが、うまく声がでません。
幽霊からは何もしてきませんでしたが、恐怖のあまり、
この場から早く逃げたいという思いに駆られました。
しかし、逃げ道は幽霊が前に立っている入り口しかありません。
そこで、意を決して入り口を突っ切ることにしました。
目を閉じて、腕をぐるぐると回転させながら幽霊に向かっていき、
入り口のドアを開けました。開けた後、後ろを振り向くと、
女性の幽霊がじっと私を見ていました。
私はすぐにドアを閉じて、両親のもとへ向かいました。
両親に幽霊のことを伝えましたが、相手にしてもらえませんでした。
寝室へ戻されそうになりましたが、頑なに拒否して、
その日は両親の寝室で寝させてもらいました。
翌日、母親と一緒に恐る恐る寝室に向かうと、昨晩いた女性はそこにいませんでした。
弟にも幽霊が出たことを話しましたが、「幽霊なんているはずがない」と一掃されてしまいました。
しかし、私の中では、あまりにも「はっきり」と姿が見えたので、
それを現実として捉える以外、整理することができませんでした。
その日以来、私は天窓を見ないようにと、横向きになって寝るようになりました。
天窓がある場所に行くと、直視するのを躊躇ってしまうぐらい、
「幽霊を見た」という記憶が鮮明に焼き付いています。