富山県の某山奥の寮の話

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小学生のころ、宿泊学習ということで私は山奥の寮に泊まりに行きました。

山奥の寮、というと暗いイメージですが、

その寮は昔からスポーツ・クラブや近隣の学校の生徒たちが止まりに来る老舗で、山の眺めもなかなか良いものなのです。

その宿泊学習でも、クラスの友達とはしゃぎまわったり、

山登りをしてよい景色のなかでおいしいお弁当を食べたりして、楽しい思い出ができました。

一つの怪談をのぞいて。

私がその話を聞いたのは宿泊学習当日の夜のことでした。

私を含む生徒たちは、見回りの先生たちの目をかいくぐって、トランプをしたり百物語をしたりしたものです。

そういった無邪気な遊びの中で、誰かがこんな話をしました。

「昔この寮で働いているうちに自殺した男の人がいたらしい。

今でも夜に寮をであるくと、その男の人がでるらしんだ」と。

その時はほかの怪談や遊びに埋もれてその話は目立ちませんでしたが、

その話はほかの嘘くさい話とは少し違っていて、妙にリアルだったことを覚えています。

子供のする怪談は、その時のほかの怪談のように、

派手なお化けがでてきてこわかったとか、簡単に人が呪われただとかというオチがついていて、

「そんなのうそでしょ」

「うそでしたー!」

といってわらって終わるものも多かったのです。

しかし、その話は特段子供らしいオチもなく、淡々としたものでした。

さて、その日の夜、私は夜中にトイレに行きたくなって目を覚ましてしまいました。

トイレに行くには、暗い廊下を進んでいかなければなりません。

それに見回りの先生に見つかったら、どうして寝る前に行かなかったのか、

などと小言を言われてしまうに違いありませんでした。

なので、人目を盗んでひっそりと、誰にも見つからないようにトイレに向かったのですが…

そこにいく道すがら、いたんです。

ぼおっとした男の人のようなものが。

それは子供ながらにこの世のものではないだろうということはわかったのですが、

それ以上のことはわかりませんでした。

というのも私はそのあと怖くなって布団に戻ってしまいましたし、

「向こう」の方もそこまで私のことを気にかけてはいなかったようですから。

地元に帰省するたび、こんな話を思い出すのです。

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