高校を卒業してすぐに就職した会社での出来事です。
従業員200人ほどの、精密機械を扱う工場で、
同期入社は私を含め8人でした。
入社して2年目に中途入社してきた同い年の男の子A君を含め、
9人の仲間になりました。
7:50には会社に着き、仲間とあいさつや、ちょっとしたお喋りをし、
8時のチャイムとともに作業を始める毎日でした。
当会社では月に一度朝礼がありました。
朝礼では社長の挨拶とともに、業績などいくつかの報告やお知らせがあります。
朝礼のある日は、作業開始時刻が少し遅くなるので、
私たちは毎月朝礼を楽しみにしていました。
そんなある朝、いつものように出社すると、
『緊急朝礼があるので集まってください』
との放送で、200人ほどの従業員が一斉に大きな会議室のような部屋に集められました。
緊急朝礼は、私が入社して初めての出来事です。
何の疑いも無しに、私たちはいつものように仲間とお喋りをしながら会議室へと向かいました。
ぞろぞろと従業員が集まってくるなか、先ほどの仲間全員と『おはよう!』の挨拶を交わしていました。
そして社員全員が集まったところで社長からのお話しが始まりました。
『昨晩、社員のA君が交通事故で亡くなりました』との報告でした。
A君は昨晩友達と遊んだあと、1人で帰宅途中に、
見通しの良いまっすぐなバイパスの道路で単独事故を起こし、即死状態だったそうです。
一瞬、何がなんだか、何が起きているのか分かりませんでした。
なぜなら、会議室に集まっている時、A君とも『おはよう』と挨拶を交わしていたからです。
社長の話は5分かからず、すぐに解散となりました。
私はすぐに、隣に並んでいた友達にそのことを話しました。
みんなさっきA君見たよね?挨拶したよね?と聞くと、みんなは見ていないとのことでした。
A君は私だけに見えていました。
しっかりと足もあり、本人そのものの姿でした。
即死だったため、きっと自分が亡くなったことがまだ理解できず、
いつものように出社してきたのだと私は思いました。
コメント