今から10年以上前の話です。
看護師として関東のある総合病院で働いていた時のことです。
当時わたしは職歴3年目でそれまでの病院を退職し、新しい総合病院に就職しました。
私と同じ時期に、ある男性ドクターもその病院に就職し、同期ということもあり、また職場で一緒に仕事をすることも多かったため、よく話をするようになりました。
そんな中で、彼は、わたしが自分に気があるんじゃないかと思っているようでした。
でもその時わたしには結婚前提でお付き合いしている彼氏がいたので、彼にはまったく恋愛感情はなく同僚の一人と思っていました。
当時わたしは病院の寮に住んでいて、3階の真ん中、階段のすぐ真ん前の部屋でした。
玄関の横にお風呂と洗面所があり、その奥にキッチン。一番奥に6畳の洋室という1ルームでした。
いつも仕事を終えると真っ直ぐ寮に帰り、ご飯を食べてお風呂に入って22時には眠るという生活をしていて、その日も22時過ぎにはベッドに入りました。
お風呂の小窓(下側が20センチほど開くだけの窓)をいつも開けっぱなしにしてたんですが、
ウトウトして、眠りに落ち始めた頃、「吉田さーん」とわたしの名前を呼ぶ男性の声がします。
初めはわからなかったのですが、「何度も呼んでる。わたしを呼んでる?」と、気づいたところで金縛りにあい、仰向けのまま動けなくなりました。
その後も、玄関ドアの前で私を呼ぶ声がします。「吉田さーん、いるんでしょ?寝てるの?」
と。聞き覚えがある声。はっ。あの先生だ!とわかりました。
その後、その声が恐ろしいことを言ったんです。
「あ、開いてる。入りますよー。吉田さん。入っていいんだね。ホントに入っちゃうよー。」
と。
いつもお風呂の小窓を開けっぱなしにしていたんです。
とっさに「そこから入るのか?!」と思いました。
そこで声は一旦止み、しばらくするとすぐ足元で先生の気配を感じました。
そして、黒い大きな手が、両足をぐわーっとさすりあげるように下から上に登ってきました。
叫びたいけど声も出ないし体に力を入れても全く動きません。
そのままお腹、胸、と撫で上げ、肩から手の先へ。
指の間に黒い手の指が入ってきて、ガッと手をにぎられました。
その間、わたしは一生懸命動こうとしているのに動けないことと、好き勝手している相手にだんだんイライラしていたのですが、手をガッと握られたところで怒りがMAXになり、
「やめろ!こらーっ!」と叫びながら足で相手の腹を蹴り上げました。
すると、フッと気配が消えてなくなり、体も自由に動くようになりました。
「やめろ!こらー!」の声も最後の「こらー!」は出ていたと思います。
あそこで抵抗しなかったらどうなってたのかと思うと、恐ろしいです。
翌日その先生とまた顔を合わせましたが、今までのようなフレンドリーな対応ではなく、よそよそしくなっていました。
その後少しして、彼は他の病院へ転勤になり移っていきましたが、あれは、生き霊だったのだろうと思います。
そして翌日からの態度を見ても彼も自覚があったのでしょう。
よく生き霊を飛ばせる人だったのでしょうか。謎ですが、不思議なこともあるものです。
恐ろしい体験でした。