あれは確か夏の終わり頃だったかなと記憶しています。
友人Tが適当にどっか行こうぜとドライブに誘ってきました。
時間はすでに深夜12時になろうとしていたところでしたが、
当時夏休みでバイトもしていなく、暇だった私は二つ返事で快諾しました。
しばらく家の前で待っているとTが私を回収に来ました。
車の後部座席にはよく知った友人3人がすでに乗り込んでおり、私は空いていた助手席に乗り込みました。
Tに聞くと行く宛は特に決まっていないそうです。
私たちは全員で歌を熱唱したりバカ話をしながらドライブを楽しんでいましたが、
車は市街地から離れどんどん山の方へ向かっていきました。
Tにどこへ行くのかと聞くと「適当に山の方へ行って戻って高台に出たら夜景でも見て帰る。」と言いました。
車内で大騒ぎしながらしばらく山道を登っていくつかのトンネルを抜けると、高台に出ました。
しかし、深夜だったためか大した夜景ではなく、皆口々にイマイチだな。と言いながら車に戻りました。
それから、来た道を戻りながら何個目かのトンネルに入ったときでした。
後ろから急にごとんという音がして振り返りました。
後部座席の3人が爆睡していたので頭が揺れて窓にでもぶつけたかと思いましたが、運転手のTが
「バックミラー急いで見てみろ」というのでバックミラーに目線を移しました。
するとそこには先程までなかったはずの丸い石がトンネルのど真ん中にありました。
人が抱えれるくらいのサイズだったかなと思います。
なんだろうかと思い目を凝らして見ようとしましたが、すぐにミラーから見えなくなりました。
Tに聞いてみると突然ミラーに現れたといいます。
すぐにUターンをしてトンネルへ戻って見ましたがそこには何もありませんでした。
Tが降りて確かめると言って車から降りました。
そして、私も降りてみようとした所で異変が起こりました。
脚が全く動かないのです。まるで地面に貼り付けられたかのように脚が動かなくなっていました。
私は焦って動こうとしますが、出来るのは体をよじるだけです。
寝ている後ろの三人に助けて貰おうとしましたが喉が掠れているかのようにひゅーひゅー音がするだけでした。
嫌な汗がだらだら流れるのを感じました。
何かヤバイ、そう思ったときでした。
外に出ていたTが戻ってきて、運転席のドアを開けた瞬間体が動くようになりました。
Tは何もなかったと不思議そうな顔をしていましたが、
私の顔を見た瞬間、汗びっしょりじゃないかどうしたんだ、とびっくりしました。
私が事情を説明するとTが「長居したらヤバイ、早く街へ戻ろう」と言い急いで下山しました。
その後は特に何事もなく家まで戻れました。
家でも何か起こったわけでもなく平穏無事に過ごせています。
しかし、あの現象は一体何だったのか、今でも思い出すと身震いします。
あの時Tが早く戻っていなかったら私はどうなっていたのでしょうか。