これは、私が実際に体験したお話です。
当時中学入学を控えた私と、家族みんなで夜の外食にいった帰りのことでした。
父の運転する車の中で母や兄弟と話しながら、毎日通る大通りの国道を走っていました。
この国道はトラックから地元市民の軽自動車にスクーター、若者のバイクや暴走族まで
ありとあらゆる乗り物が猛スピードで走り抜けるくせに
歩行者も多く、事故が頻繁に起こる道路で有名でした。
まもなく家に着くだろうといういつもの信号に差し掛かった時、
たくさんの車が行き交う道路の真ん中でロングヘアの女性が立ちすくんでいました。
初めは「あー。渡りきれなかったんだな」と、思いましたが、
その姿が近づくにつれて、全く身動きもせずただじっと遠くを見据えるような様子に不信感を覚えました。
すると父が「なんだあいつは、自殺者か?」と言ったことで私の不信感はある種の納得に変わりました。
とにかく「普通の人」ではないことに気がついた時には、家族全員がその女性を心配するような気持ちで見ていたと思います。
父は、いつ車に飛び込むかわからない、と女性の横を徐行して通り過ぎました。
私は、その女性がたしかに人間である事を無意識に確かめようとしたのでしょう。
車の窓にはりついてその女性を観察しました。
顔は見えない、髪の毛は私と同じくらいのロングヘア、背もおんなじくらい、
白いフレアのスカートに、シンプルなヒール、ふわっとしたカーディガンのような薄い生地を羽織っている、
どことなくきちんとそこいらにある服を着ていることで、この人が「幽霊」というものではないと、
妙に納得したことを今でもはっきりと覚えています。
女性のそばを通り過ぎた後、両親も同じように「人」だと思ったのでしょう。
女性の横を通ったあと、すぐにコンビニに入りUターンをすることにしました。
ほとんど同時に母は携帯で警察に連絡をしようとしていました。
一瞬だけ、その女性の姿が見えなくなりUターンをしたその後、女性はいなくなっていました。
「遅かったか」とも思いましたが通行車にその様子はありません。
それにその上下白い服をきた女性はどこにもいなかったのです。
あの一瞬でどこかに隠れることは不可能ではないけれど、そんな行動力のある様子ではなかったのです。
なんだか気味の悪い状況に、多くの会話をしないまま帰宅しました。
帰宅後、先程の出来事がなんとなく気持ち悪かった私。
この手の話や番組でさえ嫌いだったので、気持ち悪さでいっぱいでした。
その時、ちょうど友人の家で私の友人とその母達が集まっていると連絡が入り、私と母も合流することにしたのです。
距離があるため、1人迎えにきてくれることになりその車を待つ間、
準備をしながら考えないように努力していました。
迎えの車が来て、友人宅へ向かう途中母は先程の出来事を話し始めました。
私は思い出したくなく、寝る姿勢を取り会話には参加しませんでした。
しばらくすると、友人宅についたのですが
私は具合が悪くなり、我慢できず帰ることにしたのです。
また自宅に送ってもらい自分のベッドで休もうとしたとき、母の携帯が鳴りました。
電話相手はさっき送迎してくれた人。
電話の内容は「心配で・・・」とのこと。
詳しく聞くと、私達を送った後車をみると私が座っていた後部座席の上に無数の手形がついていたそうです。
その夜はうっすらと霧雨が降っていて、車には水滴がついていました。
つまり誰も触っていなければ手形など着くはずもないのです。
なのに、今まさに誰かがベタベタ触ったようにくっきりと無数の手形がついていたそうです。
もちろん私も母も触ってはいません。
数日後知り合いの方にお祓いらしきものをしてもらいましたが、
自分と同じ○○だ・・・と共感してしまうのがよくなかったんだとか・・・
そもそもあれが幽霊だったのか、手形の犯人なのかもわかりませんが。