私は、中学生夏休みに、第二次大戦の空襲の被害の実態を題材に作文を書くために秋田市内のお寺を訪問したことがありました。
秋田市の土崎という場所は戦時中は軍港があった場所だったので、
度々空襲に見舞われていて、終戦当日の8月15日の未明に空襲を受けた都市のひとつです。
市内の各地にその痕跡がありました。
私は母親と一緒に空襲で亡くなった方を埋葬しているお寺を訪ねました。
そのお寺の住職によると、戦時中そのお寺も直接空襲の被害を受けたそうで、
良く見ると飛び散った爆弾の破片で亀裂が入っている墓石や首のない仏像などがいたるところにありました。
私は、恐ろしくなりながらも、資料用に写真を撮っていきました。
ところが、何枚か写真を撮っていくと、突然カメラのシャッターが押せなくなり、
挙句の果てにはカメラそのものが全く動かなくなってしまったのです。
どうしたらよいかわからず戸惑っている私に追い打ちをかけるように、
今度はお墓の道に敷き詰められた小石が、私と母の足元にまとわりついてくるという信じられない現象が起きたのです。
これには住職も言葉を失い、「あなたたち、もう資料集めはやめてこの地を離れなさい。危険です。」と仰いました。
私も、子供ながらに、踏み入れてはいけない領域に足を踏み入れてしまい、被爆者たちを怒らせてしまった、
それか無念の思いを残して亡くなった方が私達にすがってきてしまったのかと思い、
空爆で亡くなった方々に申し訳ない気がしました。
それからは、夏休みの課題も変更し、二度と土崎のお寺を訪れることはありませんでした。