別人のようになってしまった友人の父
いつも挨拶をしたら、お決まりのように親父ギャグを言っては笑わせてくれる友人のお父さんがいました。
とても気の好い人で笑顔しか見たことがないほどで、友人も自慢のお父さんだといつも言っていました。
そのおじさんがおかしくなったのは、五年くらい前の夏でした。
台風が来て大雨が降っているにもかかわらず、無表情で洗車を始めたそうです。
何をしているの、こんな天気なのに新しいギャグなの?家の中に入るよ!
と友人が引っ張っても手を止めようとせず、結局二時間くらいやっていたんだそうです。
なにか脳の病気なんじゃないかと心配になった友人と友人の母親は、翌日の朝に病院に連れて行こうとしました。
父親は洗車をした記憶がなく、本人も心配になったそうで素直に病院に行きました。
原因不明な奇妙な行動
病院で検査をしても以上は無かったため、ちゃんと調べるために検査入院をしました。
お見舞いに行っても、いつものおじさんでした。
しかしなにも悪いところがないどころか健康そのもので、結局は疲れから来る精神的なものではないかという事になったんだそうです。
入院中はなにもなかったのですが、退院したその日の夜からまた異常行動が始まりました。
書斎の畳をめくり、剥き出しになっている床に頭をつけて拝む。
部屋の中にお酒を撒いて、どうぞ!どうぞ!と叫ぶ。
床に伏せながら、苦しいですが修行ですからいいんですありがとうございます、と言う。
ですが家を出ると普通になり仕事も普通に行くんです。
この奇妙な行動は家の中限定だったそうです。
消えた父親と紙に書かれた文字
あまりにもおかしな行動をするので、一度おかしい状態の父を見て欲しいと頼まれました。
おじさんが、私ならこの素晴らしさが解ると言ったんだそうです。
私も大好きなおじさんだったので、明日は日曜だし明日行くよと伝えましたが、なにも出来なかったかもしれないけど言われたときにすぐ行けばよかったと今でも後悔しています。
翌日の昼に友人の家に行くと、おじさんはいませんでした。
その時はどこかに出かけただけだろうと皆が思っていました。
その間に、私はおじさんの部屋を見せてと頼んで書斎のドアを開けました。
そこは、酷い獣の臭いが充満しており、あまりにも臭くて吐き気がするほどでした。
畳のことは聞いていたのでめくって見ると紙が何枚も置いてありました。
紙には「つ」の文字がびっしりと書いてあるものがほとんどで、一枚だけ文章が書いてありました。
「くるならでてく」
これだけです。
それ以来、おじさんは未だに帰ってきていません。