たまにおかしな現象を聞いてはいましたが、過去に体験した唯一のこわい出来事がありました。
その時、いよいよ自分もその境地へと入ってしまったのかと諦めモードに陥ったのを覚えています。
ある日のこと、自宅に一人で居る時、玄関のドアの音が聞こえました。
僕には兄がいるため、
「ああ、兄貴が帰ったのだな」と思って、そのままリビングに寛いでいました。
しかし、その最初の音がしたまま、部屋に入る音はなく、ちょっと気になって見に行くと、誰もいませんでした。
気のせいかと思い、またリビングにいると、今度はぎ~っという音がして、
いきなり「バタン!」と、ドアが閉まる音がしたのです。
それは兄貴の部屋のドアでした。
僕はきっと風でそうなったのだと思い、今度は窓を閉めに行き、
ドアも最後まできちんと閉めてからリビングへと戻りました。
ところがまた
「ギ~」と、開く音がしたのです。
今度は何も原因が思いつきません。
もうこんなやばい場所に一人では居られないと思い、咄嗟に思いついた、斜め向かいにある友人宅へと走りました。
友人に、ついさきほど体験した事を話すと、
「え。そんなの、俺の家、しょっちゅうあるよ」と言うではないですか。
なんでも彼の家では天井から人が走る音が聞こえるそうで、彼は
「もう、慣れた」と言っていました。
天井なのでねずみではないかと聞くと、
「いや、ねずみのような小動物の走り方ではなく、たまに人が歩くような、キシ、キシ、というような音さえ聞こえる」と言っていました。
まだ中学になったばかりだったので、気にもとめていませんでしたが、
考えてみると自分達の住んでいる地区には斎場があるのです。
数年後はその家を引っ越しましたが、やはりその近辺ではいろんな現象を体験する人が多くいたそうでした。