これは、私が8年ぐらい前の夏の初めに北海道に行った時の話です。
学生時代の同じ学部のJくんから結婚式をする招待と観光を兼ねてこないかと言われました。
J君は青森県の出身で、アパートも私の近くにあり良く話したり帰ったりしていました。
彼は合気道のサークルに入っていて段所有者でした。
卒業後は、彼は仙台の方で働いていましたが、
ご家族が北海道に移住することになり、仕事の手伝いの為会社を1年足らずで退職し、
北海道の会社に就職しました。
連絡は取りあっていて、地元の女性と結婚することになり、
私は出席と観光の為、何とか休みが取れて飛行機で北海道に向かいました。
同じゼミのT君と女性のOさんと共に千歳で降りて十勝へ向かいました。
J君は最初は函館に居ましたが、ご家族の仕事等で十勝で農場を営んでました。
自然あふれ空気も良く、一時ブームになりました花畑牧場もあり、のどかで新鮮でした。
J君の結婚式に出て、初日はホテルに泊まりました。
次の日はJ君の農場兼自宅で私達は泊まることになりました。
泊まる場所はJ君の家の隣の離れが倉庫になっていてその二階でした。
とても広く部屋が多くあり、1階は彼が合気道を教えたり
練習するとにかく広いスペースで驚きでした。
J君から合気道を教えてもらったりして、楽しい時を過ごしました。
泊まる二階の部屋に荷物を置いたときに、いつも明るく温厚なJ君の表情が暗くなりました。
「あの、言いにくいことなんだが、もし、夜中変なことが起こるかもしれない。
起きたら黙ってやり過ごして寝て。」と言ってきました。
Oさんが、「なんかあるの?」と聞くとなんでもないとそれ以上はJ君は何も言いませんでした。
夜、J君のご家族の皆さん達と食事しました。
北海道の自然の海や山の幸の食事は非常に美味しく、お酒もうまかったです。
ジンギスカンも大量の肉が追加され食も進みました。
夜21時くらいになり、J君達は朝早くから農場の仕事と次の日は富良野等を案内してもらうことになってましたので、お開きとなり就寝しました。
T君はお酒を飲み過ぎて吐いて直ぐにダウン。
別室のOさんもお酒に強かったですが、次の日の観光もあり就寝。
私も眠くなってきたので布団に入りました。
夜0時くらいだったかと思います。
私は突然急な寒気を覚えました。
北海道の夜は涼しいのですが、その時は何故か冬のような寒さを覚えました。
温かい毛布を掛けていたのですがやけに寒いし冷たい。
私とT君の部屋の周りがピシッと音が何回かしました。
私は北海道の気圧や建物の影響かなと思いました。
トイレに行きたくなったので部屋を出て歩いてトイレに行きました。
トイレに入った時何故かひそひそと話声が聞こえました。
私は、T君とOさんが起きて話してるのかなと思いました。
済ませてドアを開けて部屋に戻ろうとした時でした。
廊下に白くぼやけたような物が見えました。
私は寒さか霧かとおもいましたが、部屋の廊下でそんなものは発生するわけないと思いなおしました。
ゆっくり歩いて部屋に行こうとすると、その白いぼやけた物は先の一階へ降りる階段へと向かっていきました。
私はちょっと不気味に思えました。
部屋に入る時には階段の方の煙らしきものは消えてました。
ホッとして部屋に入ろうとした時、廊下から星空が見えたので窓ガラスを見た時でした。
そこには無表情の40代くらいの男性の顔と女性の顔がうっすらと映ってました。
私は一瞬固まりました。
何故なら首までみえましたが、そこから下はなかった。
2階とは言えいい高さです。
窓ガラスの付近にはベランダもありません。
いたずらでもなく、ただ男性と女性の顔が虚ろでした。
私は息を飲んで、怖さに耐えてドアを閉めて部屋に入りました。
布団にもぐりました。
私の横には爆睡しているT君が居ました。
ゾッとして直ぐに布団を被りいつの間にか寝てました…。
朝になり、起きると、着替えたOさんが部屋にやってきました。
「き、昨日、夜トイレに行ったらさ、子供二人が廊下歩いていたんだよね。でも、足がないんだよ。」
とOさんの暗い表情の話で私はドキッとしました。
私も昨晩の事を話したらOさんはさらに青ざめていました。
朝食にJ君にその話をしたら、彼は躊躇いながらも重い口を開いて話してくれました。
J君達の住んでいる場所は、以前酪農の事業を営んでいた人が住んでいました。
しかし、事業に失敗し大量の借金を抱えて、病気し、後に一家心中したという場所だったことが判明しました。
私達が泊まった離れやJ君達の居住区も時折夜に子供の声や走る音、姿を見ることが度々あると教えられました。
私は恐怖で、その日の富良野観光は上の空でいい景色も全然頭と心に入ってきませんでした。
その日は札幌のホテルで3人で泊まりました。
最近になってJ君から連絡がきました。
メールで「諸事情で十勝を離れることになりました。
札幌で暮らすことになりそうです。仕事は順調ですが。あの住まいは解体しました。」
と短い文面がきました。
一体J君達にも何があったのかわかりません。
でもあの日泊まった時の夜の出来事は忘れられません。
あの時以上の寒さは経験したことがありません。
そんな私が体験した怖い話でした。