愛知県長久手市。
名古屋市のベッドタウンとして昨今急速に開発が進んでいるこの市に、おどろおどろしい名前の公園があることはご存知ですか?
その名も、血の池公園。
小牧・長久手の戦いのとき、徳川家康方の家臣渡辺守綱らが血のついた槍や刀を洗っていた池がありました。
合戦のあった毎年4月9日になると池の水が赤くなる、
という伝説が残っていたその池を埋め立ててできた公園が血の池公園です。
私はこの付近の大学に進学するにあたって、この市に引っ越してきました。
地図で近くに何があるのかな?と調べていると、え?誤植か何か?
と思ってしまう程不気味な名前が載っていて、とても驚いたことが記憶に新しいです。
興味津々な私は、早速その公園に突撃してみました。
本当に真っ赤な池があるのだろうか?わくわくした気持ちでいっぱいです。
ですが、残念なことに、そこには赤いどころかただの池すらありませんでした。
見栄えも普通のきれいな公園という感じで、拍子抜けしてしまいました。
まあこういう類って、そんなもんだよね。
そう現実的に受け止めて、すっかりその公園のことは忘れてしまったのです。
それから時を経ること3年。
大学4年生になった私は、日々就活に追われる毎日で疲労困憊でした。
その日も就活の帰りで、一人夜遅く住宅街の中を歩いていました。
あまりにも疲れすぎていて、ふと目にした公園になんともなしにふらりと立ち寄って、
気が付いたらベンチに座ってぼーっとしてしまっていました。
しばらく経って、何か違和感を覚えました。
ガチャガチャと聞きなれない音が聞こえてきたのです。
はっと振り返ると、そこには何と甲冑に身を包んだ人たちがいるではありませんか!
彼らは手に持った槍や刀を池に突き刺していました。
え、池……?そうです、池が埋め立てられてグラウンドになっているはずの場所に、池があったのです!
しかも次第に池の色が朱に染まって行き、5分もしないうちに真っ赤になってしまいました。
あまりの光景に絶句して固まっていた私でしたが、気が付いたら兵士たちがこちらを見ているのです!
一気に体中の毛穴がぞわっとするほどの寒さに襲われた私は、
悲鳴を上げながら一目散にその場を立ち去りました。
いつの間にか部屋の中にいた私は、安堵感からかすぐに寝入ってしまいました。
昨夜のことは何だったのだろうかと、翌日のお昼に恐々と公園を訪れてみましたが、
子連れの主婦が仲良くおしゃべりしているだけで、そこには甲冑に身を包んだ兵士も、赤く染まった池もありませんでした。
私はほっと胸をなでおろしました。
しかし、そういえば、と。ふと思い出したのです。
血の池公園。4月9日になると池が真っ赤に染まる。
私は恐る恐るスマホを開いて今日の日時を確認しました。4月10日。
そんなまさか……。