私が学生時代の事です。
同じサークルで一つ上の女性の先輩のMさんが居ました。
時に飲みに行ったり食べに行ったりしました。
Mさんは静岡出身でご実家が茶畑をやっていました。
春、GWの終わりに私が実家からアパートに戻ってきたら丁度Mさんから連絡がありました。
交通費も出して宿泊も実家で。
アルバイト代も出すので茶畑の仕事を手伝ってくれないかとの電話でした。
他のアルバイトやパートの方が不幸や、腰を痛めて作業ができず、2泊3日でお願いしたいと言われたのです。
まだ大学も始まるまで1週間あったのと、それまでしていたアルバイトが改装の為しばらく休みで出来ずに丁度お金も欲しかったので私はOKしました。
主に夜の作業でした。
その日の深夜、Mさんは彼氏のHさんと、私と同じサークルの女性BさんとU君と共にHさんの車に乗って静岡に行きました。
まだ薄暗い中到着したMさんの実家は大きくて驚きました。
Mさんのご両親やお姉さんも出迎えてくれて、着替えて私達は早速作業をすることになりました。
茶畑や倉庫で色んなことをしました。
私はBさんと共に一部の茶畑を掃除したり採取したりしていました。まだ夜は明けずに暗かったです。
私はBさんと話しながら作業をしていましたが、妙に何処からか視線を感じました。
振り向いても誰も居ません。ですが、何かに見られているような気がしました。
次第に明るくなってきたときにとりあえず作業は終わり、朝食を貰うことになり家に向かおうとしました。
Bさんの顔色が暗く何故か気になりました…
美味しい朝食を頂いて部屋に案内されてくつろぎ睡眠。
夕方前に目覚めて、静岡の町でカラオケや飲んだりして遊んで軽く休憩や睡眠を取ってから夜に作業が開始しました。
私とBさんは同じ茶畑の採取で手は痛く、量は多かったのですが頑張ってやりました。
ふと、額から流れる汗が止まらずタオルで拭いて小休止していた時でした。
辺りは暗いのですが私の右横の茶畑から何か白い物が見えました。
薄く白いぼやけた感じがしました。
よく目を凝らしてみると小さな老人のような顔が茶畑からひょっこりと顔を出していたのです。
私は最初は関係者の方かとも思いましたが、何かあれば声を出してくるでしょうし、夜中なのでとても不気味でした。
顔だけ出している老人の表情は無表情でした。
私は気味悪くなってしまいましたが、アルバイトも放棄するわけにもいかず、Bさんと採取しカゴに溜まったら倉庫に運ぶ。
そして、再び戻り作業を再開しました。その時はもう老人はいませんでした。
2日目も朝食事後睡眠。昼以降に目覚めてフリーの時間を過ごして茶摘みの作業でした。
夜、茶摘みをしていた時何もありませんでした。
明け方前に終了し、Bさんと倉庫に運ぶ時でした。
再び茶畑から老人の顔が見えました。
私は目が合うと無表情だった老人の顔がニヤリと笑いました。
私は怖くなり、「Bさん。早く行こう!」と急かして倉庫に行きました。振り返りもせずに…。
倉庫に付いた際、Bさんが言いました。「おじいさんみたいな人見た?」と暗い表情で私に聞いてきました。
私は見たことを全て彼女に話しました。
するとBさんも「私も始めたときからおじいさんがずっと見ていて時たま笑っていたりして気持ち悪かった…
首しか見えなかったり、胸から下が全くなかった。幽霊だったかも…」と脅えてました。
作業を終えて、朝食をする大きな居間でずっと食事をしていたのですが、私とBさんはあることに気づきました。
居間の上の壁の額縁に写真が何点かありました。その中に私とBさんが見た老人が写っていたのです。
私はMさんに聞くと、「ああ、これ数年前に亡くなった爺ちゃん。ずっと茶畑やってたんよ。」と教えてくれました。
私やBさんが見たのはMさんのおじい様だったのです…。その後は何もなく結構いい額のアルバイト代を貰い帰りました。
それから数年後、社会人になりMさんの結婚式で再び静岡に行きました。
MさんはHさんが婿養子になり茶畑農家を継ぐことになり結婚しました。
その式の時に軽く話をした時に私やBさんは当時の話をしました。
するとMさんは、「ああ、私もたまに見る時があるよ。別に何もしない。
声を掛けると直ぐに消えるよ。きっと茶畑心配で見守ったり、仕事ぶり見てくれて見守ってくれてるのかもね。」とゲラゲラ笑いながら話してました。
私達が見たのはきっとMさんのおじい様だったと思います。
何か害があったというわけではありませんが、夜中に見る霊は怖いと今でも思い出すとちょっと怖いと感じます。
そんな私が体験した話でした。