私は釣りや登山、キャンプを趣味にしており、
自然を独り占めにする感覚が好きでほとんど単独で行動しています。
春や秋には森の中でハンモックで眠り、山奥の渓流で野宿をしながら
ヤマメやイワナを釣ることも大好きな、そんな人間です。
夜の山や川で多くの時間を過ごした私が、
これまでにずいぶん多くの不思議な体験、
奇妙な体験をしたことはある意味では当たり前であるのかもしれません。
先に言っておきますが、私は「不思議」なことはあるものだと認めてはいますが、
いわゆる「霊」というものにはあまり興味がありません。
そんな私がとくに不思議に思い、そして怖いと感じた10年ほど前の体験をお話します。
茨城県水戸市の端に、目測で周囲500メートルほどのわりと大きな池があります。
私は当時、ヘラブナという魚を釣ることに夢中になっており、
大物を狙ってこの池を訪れたのは秋の夕方のことでした。
ヘラブナは夜釣りで大物が釣れることが多いため、この日も夕方から夜にかけての釣りとなりました。
帰り支度を始めたのはおそらく夜10時を過ぎてからのことだったと思います。
ヘッドライトを頼りに道具を片付けていると、
釣りの最中には気が付かなかった白い物がふと目に入り、
目を凝らしてみましたがライトの光は弱く、
人間程度の大きさの物がそこに立っているような姿でそこにあることは分かりますが、
それが何であるかは確認できませんでした。
気になりながらも片付けを続けましたが、
その白い物はいっこうに動く様子もなく、帰り支度を終え歩き出してもまだそこにありました。
ただのゴミか、冷蔵庫でも投棄されていただけなのだろうと思いました。
釣りをしていた場所から車までの距離は30メートルほど。
舗装はされているものの、車の進入が禁止されているため
所々に草が生え、両脇には木が茂っています。
人気のない寂しい場所ではありますが、怖いという感じは私にはありませんでした。
そして車が見えそうな場所まで歩いたところで、ふと視界に違和感を覚えました。
前方をまっすぐ見て歩く私の視界の上のほうに、白く大きなものがあったからです。
私は見上げました。
頭に付けたヘッドランプは、私の頭の動きに合わせ白い物を照らします。
目の前、私の顔から1メートル程度、少し高い位置にあったそれは、
垂れ下がった人の足でした。
白い布か服かは分かりませんでしたが、
その白い布の中から二本の足が垂れ下がり、
数歩離れて見上げてみると、体型からは女性と思われる人間がぶら下がっていたのです。
不思議と恐怖はありませんでしたので、慌てて逃げることもありませんでした。
ただ、じっと見ていましたが、揺れることも、動くこともなく、そこにぶら下がっていました。
顔は上を向いた状態だったので、表情は分かりません。
そしてよくよく見れば、ぶら下がっているわけでもありませんでした。
もし、この世に幽霊というものが存在するとするならば、
まさにこれが幽霊であったのだと思います。
いま思い出しても、不思議な体験でした。
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