コレは千葉県のある場所に家の墓地がある友人が小学生の頃、
お盆の時に両親兄弟と墓参りに行った時の話だそうです。
その墓地は山の上に立つ小学校の体育館の脇にある小さな階段を登った所にヒッソリと存在する
ごく小さな集落の墓地であり、鬱蒼と生い茂った木々のせいか天候や季節、
時間に関わらず薄暗く夕闇が迫る時刻にもなれば目視での景色の確認も難しくなるような場所だそうです。
まず、山の上のあまり拓けていない場所に存在する昔ながらの墓地なので、
立派な墓石に守られたような墓は無く、各家の区切りこそあれ皆が同様に
穴を掘って骨壺を埋め、その上に木の墓標を立てたような墓地だったそうです。
ひょっとすると時代が時代ならそのまま土葬した可能性もありますね。
話を戻しましょう。
墓参りとは今でこそ忙しい時代なので疎かにしがちですが、
特に盆や彼岸となれば昔は欠かせない行事であり、
特に子供にとっては意味のわからない事でも親に倣ってせざるを得ない文化です。
小さな集落の墓地だけに、あちらも知り合い、こちらも知り合いと知り合いの墓ばかりなので、
親はあっちにもこっちにも線香を手向けては手を合わせていたそうです。
ところが、墓参りに飽きてしまった幼い友人兄弟はあろうことか墓地を舞台に
追い掛けっこやら隠れんぼを始めたそうです。
何気無い風景であれば微笑ましいワンシーンですが、場所は薄暗い不気味な雰囲気すらある墓地です。
最初は親も『あまり離れた場所に行かずにいい加減にしときなさいよ!』
という感じだったらしいですが、遊びに夢中になった兄弟は
いつしか墓地の再奥部まで遊びの幅を広げてしまったらしいです。
友人がふと気付いた時にお兄さんの姿は無く
『お兄ちゃん、お兄ちゃん!』と呼んでも返事が無かったそうで、
暫くの間はどこに隠れたんだろう?という感覚で探し回ったそうです。
時間が経ち不安になった友人は親のいる場所に戻って兄がいなくなった事を告げたそうです。
両親も焦って探し回った上に警察に捜索届けを出したそうです。
数日間行方は見つからずに心配な日々を過ごしていた友人宅にひょっこりと友人の兄が帰ってきました。
友人の兄は心配を掛けた対価として散々怒られたそうですが、その時、兄は言ったそうです。
『追い掛けっこをしていたら何かに足を取られて転んだけど、自分はスグに帰って来たよ!』と……。
友人の兄が過ごした一瞬の時間と友人、友人の両親が過ごした数日間の差がどのような現象かはわかりません。
あ、そうそう、何かに足を取られたという友人の兄の足首には何者かに掴まれたような赤黒い痣があったそうです。
何者かによるメッセージや警告なのか?
それとも偶然の出来事なのか?
今となってはわからないけれど、その墓地は今も同じ場所で変わり行く街並みを見下ろすように存在しています。