私の霊感の強い知人(40代男性)の体験した話です。
彼は20代の頃、九州地方で働いていたのですが、そこの社員寮で不気味な思いをしたそうです。
件の寮はだいぶ年季が入っていましたが、至って普通の佇まいで特に嫌な印象は受けませんでした。
同期の友人と一緒の部屋だったこともあって、入寮当初はむしろ楽しく暮らしていたそうです。
新しい生活にも慣れてきた頃、仕事が終わって帰宅し、彼がシャワーを浴びていた時のことです。
髪を洗っていると、首筋にびしゃりと何か冷たいものが当たりました。
何だろうと思い確認すると、それはぐちょぐちょに濡れた長い髪の毛の束でした。
彼も同室の友人も短髪だったため、この部屋の住人のものでないことは明らかでした。
彼は驚いて天井を見上げましたが、なんの異変も見当たりません。
急速に肝が冷え、彼はすぐに同室の友人を呼びました。
駆け付けた友人に事の顛末を話すと、友人は天井を開けて調べてみようと言い出しました。
彼は気が進まなかったのですが、友人は言い出したら聞かないタイプだったので、
すぐさま台を持ってきて天井の板を外しました。
友人はしばし中を探っていましたが、程なくして何かが手に触れたと言い、小さな物体を掴み出しました。
急いで確認すると、古ぼけたかんざしだったそうです。
ここで初めて二人とも状況の異様さを認識するに至りました。
とにかく浴室から離れようと二人が脱衣所に出たところ、
それまで真っ白だったはずの壁にぶわっと何かシミのようなものが浮かび上がり始めました。
徐々に形を成してきたそれは巨大な女性の横顔のように見えたそうです。
「あの時はビビったね。これまで普通に暮らしてたのに、急に怪奇現象目白押しになるんだもん」
と知人は当時を回想します。
「俺一人だったら疲れてたせいとか勘違いかもって思えるけど、友達も一緒に見ちゃったから間違いないよね」
のちに高名な霊能力者の方のお世話になり、鎮まったのだそうですが、
それまではしばらく奇怪な出来事が続いたのだとか。
結局、何故そんなものが彼らの浴室の天井にあったのかなど、
詳しい話は聞きそびれてしまいましたが、
霊媒体質の人はとかく怪しいものを引き付けやすいのだと実感したエピソードでした。