これは私が小学校5年生の時に実際に体験した話です。
私の学校の林間学校は、毎年ひたちなか市の宿泊施設に行くことが習わしでした。
宿泊施設の名前は失念してしまったのですが、山の中にあり
一号棟から八号棟まである大きな施設でした。
旅館やホテルというよりは、合宿所に雰囲気は近いかも知れません。
一号棟が古く八号棟が新しい建物で、私達が宿泊したのは八号棟でした。
林間学校の時期になると毎年6年生の先輩から、
あの宿泊施設はお化けが出ると驚かされるのも風物詩で、
私達も例に漏れず聞かされてはキャーキャーと騒いでいました。
その日は生憎の雨で、先輩から聞かされた心霊話に
拍車が掛かり女子の部屋はどの部屋も大騒ぎでした。
一部屋五人くらいの部屋割りだったでしょうか、
私の部屋は兎に角怖い話で持ちきりで悲鳴も上がっていました。
そんな時隣の部屋から悲鳴が聞こえて来たのです。
隣の部屋も同じように盛り上がってるのかなぁと思っていたのですが、
次の瞬間私達の部屋に駆け込んでくる隣の部屋の子たちを見て、これは違うなと感じました。
どうしたの?と聞くと、
「壁に顔が浮き上がってる!」
と口々に言うのです。
集団パニックの様になっていたので、実際に見たのは
一人二人だったのかも知れませんが、全員見たと言うのです。
まさか~と思い私達の部屋の子たち全員で隣の部屋へ見に行ったのですが、何も起こりませんでした。
しかし怯えきってる子たちを見て、安易に「嘘じゃん」とは言えませんでした。
その日の室内待機の時は、隣の部屋の子たちは全員私達の部屋にずっといました。
夜になり寝る時間が迫り、流石に全員はここで寝れないので、
隣の部屋の子たちは渋々部屋に戻っていきます。
バルコニー越しに、大丈夫?なんかあったらおいでね!なんて声を掛けてから私達も就寝に就きました。
私は中々眠れなかったのですが、隣から悲鳴も物音も聞くことがなかったので、
大丈夫なんだろうな、とぼーっと思っていました。
何時間ぼーっとしていたのか分かりません。
不意に、部屋の中に誰かが起きている気配がしました。
同室の子が誰か起きているのだろう、そう思いました。
しかし、ふと床の間に視線を向けてみると。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
と背中を向け俯いている女の人の後ろ姿が見えました。
その声は吐息のような声でした。
不思議と怖くなかったのを覚えています。
余りにも悲しげな声だったので、どうしたの?と声を掛けようとした瞬間
真っ暗になり、気付いたら朝になっていました。
あれは夢だったのかな?と思っていたら、私の隣で寝ていた子が、
「昨日誰と話してたの?」
と、こっそり問い掛けて来たのを聞いて、あれは夢じゃなかったんだな、と思いました。
その子には寝惚けてたのかも、煩かったよねごめんと謝りましたが、
恐らく私はあの女性に「どうしたの?」と声を掛けてしまったのでしょう。
その日から私は、心霊現象を体験することが多くなってしまいました。
話しかけては駄目ですね。