これは私の自宅近くのJR総武線新小岩駅の公衆トイレの話です。
この新小岩駅は自殺者が多いことで全国的にも有名な駅なのですが、
私たち地元の人間にとっては日常的に利用している普通の駅の一つに過ぎません。
しかし余所の人たちにとっては、恐怖の心霊スポットのように見えることもあるようです。
実際に新小岩駅をネット検索してみると、自殺者が多くて幽霊が出るなど、
出鱈目や大袈裟なことが書かれていて私は不快に感じます。
きっと地元民は皆、そう感じているのではないかと思います。
そんな新小岩駅についてですが、実は私は過去に一度だけ怖い思いをしたことがありました。
それは数年前のことでした。
その日、私はいつものように通勤でS駅を利用しました。
一日の仕事を終えて帰宅する際、トイレに行きたくなったので新小岩駅の公衆トイレを利用したのです。
その日は残業があったので、時間は夜10時くらいだったと思います。
用を足して手を洗っていると、ふと鏡の向こうに人影が過ぎるのが見えました。
ほんの一瞬、視界の片隅に誰かの影が見えたのです。
しかしその時、トイレ内には私以外は誰もいませんでした。
「何だろう。目の錯覚かな。残業で疲れているのかな」
私は不思議に思いましたが、気にも止めずにトイレを出ようとしました。
その時もう一度、鏡の片隅に何かが見えました。
それは確かに人の顔のような影であり、白い二つの目がギョロリと周囲を見て誰かを探しているように見えました。
しかし、振り返ってしっかりと見直してみると、何も見えませんでした。
私は背筋がぞくっとしました。
あれは何だったのか分かりませんが、怖くなった私は急いで帰宅しました。
そんなことがあって数日後、一人の女性がS駅の快速線ホームから飛び込み自殺を図りました。
それが私の怖い体験と何か関係があるのか、最初は分かりませんでした。
しかし、ふと思ったのです。あの目は死に神の目であり、自殺しそうな誰かを探していたのではないかと。
聞く所によると殆どの飛び込み自殺者は、自殺する前にはトイレに行くそうです。
今も新小岩駅のトイレの鏡の中には死に神がいて、人間世界を覗き込んでいるのかも知れません。
ある夏の日に
あれは数年前の夏の日でした。
家から出て近くのJR駅の改札口の前を通り、
いつものとおり目的地まで歩いていたときです。
その駅はどこかに移動するときによく利用する駅です。
その当時はあまり電車を利用していなかったのですが、
毎日ほぼ必ず駅を歩いてとおりすぎていました。
その日もいつものように、駅の中を歩いていたときです。
新小岩駅で人身事故が起きたから
電車が停まっているというアナウンスの音声が流れていました。
悲しいことに、
こういう人身事故のお知らせは決して珍しいことではなく、
私もさほど動揺することはなかったです。
そのとき耳に入ってきた言葉
駅から出たときに、
そばを歩いていた男子大学生のグループに気がつきました。
そのグループの中のひとりが
「やっぱこえ~!新小岩、あのへんには絶対住めね~!」
と、大きめの声で話しているのが耳に入ってきたからです。
その人が言うには、駅にいると
”なにか引っ張られるような感じ”がするそうです。
新小岩は私にとっては、駅はあまり利用したことはないのですが
東京のほうに行くときには必ず通過する駅ですし、
友達が住んでいたこともあるのでなじみがある場所です。
友達はこういうことは全然言ってなかったのですが、
感じやすい人と全然感じない人の違いでしょうか。
私も感じないのでよくわかりません。
私は何も感じず
先日、東京のほうに用事があり、
電車での移動で新小岩駅にも停まるので試しに降りてみました。
残念ながら(?)やはり私は何も感じませんでした。
こういう能力がない人は全然ないですから、
私は一生ないままでいいと思います。