バンドサークルの合宿で、長野県の斑尾に行った時のことです。
斑尾は冬はスキー場として賑わうのですが、夏はオフシーズンで、その間は貸しスタジオを備えたホテルとして大学生が避暑を兼ねてやってきます。
斑尾には廃墟が多く、怖いもの見たさに肝試しで廃墟に行きたがる人が毎年チラホラいました。
ただ、合宿で泊まるホテルからは少し遠いので毎年なんだかんだでポシャっていました。
しかし、私が大学年生の時のことです。
誰が言い出したかはもう覚えていませんが、暇な人たちで廃墟に行こうという話になったのです。
私は怖い話や幽霊が大嫌いなので最初は行きたくないと一点張りしたのですが、友人たちに言いくるめられて仕方なく一緒に行くことになりました。
暗い道を抜けて廃墟にたどり着きました。
元々は誰かの別荘だったのでしょう、中に入れたのですがダイニングらしきところにテーブルがあったり風呂場があったりしました。
せっかくだし記念撮影をしようと、友人がスマートフォンで写真を撮りました。
廃墟には似つかわしくない、笑顔にピースで。
何もなかったね、とみんなで言い合いながら合宿所に戻りました。
その後、私は部屋に戻り大浴場に行く準備をしてまた廊下に出ました。
すると、写真を撮ったスマートフォンを持った友人を中心に人だかりができていました。
どうかしたのかと声をかけると、写真を撮った友人が震えながら言いました。
「ここ…見て」
先ほどの写真を見ると、私たちの背後の部屋に繋がるドアの向こうに写っていたのです。
青白い男の顔が……