母方の実家
母の実家は練馬にあり、子供の頃は週末になるとよく遊びに出かけたものです。
同じ敷地には母の従妹も住んでおり、子供にとっては十分な広さの庭もあったので、私は祖父と曾祖母も交えてよく遊んでもらったものです。
ですが、曾祖母もかなり高齢であった為にある日ぽっくりと亡くなってしまいました。
母とは親子とあり、よく言い争いもしておりましたが、私にとっては優しいおばあちゃんで、とても淋しかったことをよく覚えております。
その数ヶ月後、すぐに弟が生まれました。
お利口さんな弟がしでかしたイタズラ
兄弟ができてからも、私たちはよく母方の実家に足を運んでおりました。
弟は男の子にしては大人しく、3歳を過ぎるまでほとんどしゃべらない子供でしたが、庭で鬼ごっこをしたり、泥遊びをしたりと仲良く遊んでいました。
ある日、いつものように庭で虫を捕まえて遊んでいると、縁側で弟がしゃがみこんで何かをしていました。
その時は特に気にもとめなかったのですが、すぐに親が慌てて弟に近寄り何やら怒鳴っているのが聞こえてきたのです。
弟はのこぎりを持ち出して縁側の足を切っていたのです。
好奇心旺盛な時期とはいえ、普段はお利巧な弟にしては珍しいことでした。
普段はあまり喋らない弟は、目からポロポロと涙を流し唇を歪ませていましたが、何故そんな事をしたのかは不明のままでした。
20年後…
母が亡くなり、弟と思い出話をしていた時のことでした。
私にとって不可解なあの時の行動をさりげなく聞いてみることにしました。
すると、弟は神妙な顔をして話し始めました。
「あの縁側…怖い顔したおばあちゃんがいっつも座ってて、こっち見てるんだよ。だから、縁側がなくなれば、おばあちゃんも来なくなると思ったんだよね」
あの穏やかな庭で、そんな恐怖体験をしていたとは露知らず、私は驚きながらもはっとしたのです。
「もしかして、そのおばあちゃんってこの人じゃない?」
私がアルバムを取り出し曾祖母の顔を見せると、弟はそうそう!と言いました。
笑顔をつくるのは確かに苦手な曾祖母でしたが、あんたが生まれる前は紙風船で遊んでくれたり、折り紙つくってくれたり、いっぱい遊んでくれたんだよ、と私は話しました。
長年の誤解がとけたような気持ちになり、ほっとしました。
おばあちゃん、いつも見守ってくれてありがとう。