高校の合宿で、1つの部屋に集まって女子同士話していたときに怪談が話題になりました。
その合宿に使っている建物は建築から三十年以上経つもので、ボロが出始めていました。
廊下には何かの御札が貼ってあり、生徒みんなで「何あれ…」と指差していました。
そんな環境もあり、怪談話をするには絶好の機会だったと言えます。
そこで同じクラスの女の子が話したのは、学校に出る幽霊の話でした。
「部の先輩から聞いたんだけど、グラウンドに幽霊が出るんだって。私は見たことないんだけどさ…」
彼女が言うには、グラウンドの隅に老婆の霊が出るとのことです。
「それって、野球のホームベースがとかある方向?」
「そうそう」
「同じ話、うちでも聞いたことあるかもしれない」
他の女子も似た話を聞いたことがあるようでした。
「先輩が言ってたんだけど、試合の日のことだったらしいよ。
グラウンドのすみっこにおばあさんがいたから部長に聞きに行ったんだって。
見学していいんだっけ、OKだったら案内したほうがいいのかなって思ったから。
あのあたりボール飛んできそうでしょ?それで部長読んできたら、そのおばあさんいなくなってたんだって。
見間違えだってことでその日は普通に試合したんだけど、
今度は別の部員の子がおばあさんを見たってちょっとした騒ぎになったんだ」
老婆の霊が何か危害を加えてきたという話は出てきませんでした。
しかし、何故グラウンドに彼女は現れたのでしょうか。
彼女の子や孫が高校の生徒だったのでしょうか。
あれから私は高校を卒業し、母校に関わる機会はなくなりました。
けれどもあの寮での怪談、グラウンドに現れる老婆の霊を思い出します。
彼女は今もあそこにいるのでしょうか。