20代の頃のことでした
私がまだ20代の頃のことでした。
私の部屋はあとから継ぎ足したような洋式の部屋で、
私は自分で買ったセミダブルのベッドに寝ていました。
夏の頃になるとよく思い出すのですが、
その部屋のある家は今ではもう誰も住んではいません。
その家の出来事というのか、夜中に背筋の寒くなるような物音を聞いたことがあります。
人の気配の消えた部屋
夏だったか夜中になかなか眠れず、
隣の隣に寝ているはずの両親を気にかけてみると、
彼らもなかなか寝付けないようでした。
それから、しばらくすると何か物音がします。
耳を澄ませてみると、なにやら麻袋に何か
入ったようなものを引きずるような音です。
目を閉じてみるといっそうその音がリアルに
響いてきて中には人が入っているかのような音でした。
私は怖くて目を開けるのもいやでした。
そうしているうちにも両親の寝ている気配はまったく
しなくなってきて、その音だけになりました。
祠があった
この家のある土地は昔、山を切り開いて作った家だったのですが、
もしかしたら誰かがむかし埋められていたとか、
そんな話を連想してしまいました。
実際、すぐ家の隣の山には曰くありげな祠が置いてありました。
何度か母とお参りに行った記憶がありますが、
今はきれいにとり払われて住宅地になっています。
父親の体験
その音は「ずっー、ずっー」というような麻袋を
右左と引きずってどこかへ引っ張っていこうとしていました。
その部屋はむかし、父親も油あせをかくような体験を
したみたいで、2、3日寝込んでは言葉も話せないくらい
衰弱していたことがありました。
その父親はもう亡くなってしまっています。
そういえば、父親の妹も生前そのような体験をし
ていたことを思い出してしまいます。
今は亡き人たちのことは想像でしかわからないところは多いです。
今、思うとその時代には話せないことも多かったのかもしれないです。
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