便所の白い影
富山県の小学校で、二人の女の子が校庭で遅くまで遊んでいた時のこと。
帰るときに一人が校庭の隅の便所へ入った。
女の子が用を足し終わると、
不意に便所の窓をたたく者がいた。
変質者かな?と思っていると、
壁を通して白い人影がすうっと入ってきた。
うめき苦しむような大声も響いた。
びっくりして大急ぎで飛び出し、もう一人の女の子に
「便所の窓をたたいた?」と聞いた。
すると「知らない」と返事がきたので、
悲鳴を上げながら慌てて家に帰った。
大木からチャンバラの音
白い人影の話は学校中の噂になり、
ある男の子たちが「お化けの家を見つけよう」と探検隊のようなものを組んだ。
便所の裏には大木があった。
その木は直径三メートル程で、
人が入れるほどの空洞があった。
男の子たちがその木のまわりをウロウロしていると、上級生がやってきて言った。
「オイ、夜この木の洞に入って、ジーッと耳を澄ましてると、
侍たちが刀と刀を合わせるチャンバラの音が聞こえるんだぞ」
上級生はそばに落ちていた棒を拾って、
エイヤ、エイヤと刀を振り回す真似をしながら、
洞の入り口をバシバシと盛んに叩いた。
白い影どうしの決闘
男の子たちはお化けの家を発見したと興奮して、
その日の夜中に学校へ忍び込んだ。
そして何人かが木の洞に入って静かにしていると、
たしかに奥の方から刀を打ち合うような金属音が聞こえる。
校庭のほうを見ると、二つの白い影が激しく動いているのが見えた。
影はくっきりとした侍の形になり、校庭の真ん中で
決闘場面のようにお互い対峙して斬り合いをやっている。
侍の姿は校庭にあるのに斬り合いの音は洞の奥から聞こえる。
男の子たちは唖然としてその光景を見ていると、
突然洞の中から「アーッ」という、あたりをつんざく大絶叫が響いた。
それと同時に侍の姿は消え、音も聞こえなくなった。
便所はのちに取り壊されたが大木は今も残っている。
その洞の中に入ると、今もチャンバラが聞こえるという。
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