今から30年くらい前の話です。
熊本県在住のHさん(女性)は
当時、喫茶店を営んでいました。
ある日、閉店作業をしていると店の電話が鳴りました。
時間は夜の10時ごろ。
遅い時間ですが、
問い合わせや予約の電話がかかってくることは
珍しくなかったので、Hさんは電話に出ました。
すると、電話口から聞こえるのは5歳くらいの男の子の声でした。
そして、男の子は「迎えに来て」と言うのです。
Hさんは間違い電話だと思ったものの、
こんな遅い時間に小さな男の子からの
電話を無下にはできず、話をつづけました。
「お父さんかお母さんが迎えに来てくれるの?」
「僕のお名前は?」
「僕はどこに住んでいるの?」
など、色々と尋ねましたが男の子の返事は
「わからない」の一言でした。
それでも根気よくHさんが質問をすると、
男の子はどうやらパジャマの上、
裸足で屋外にいるようでした。
もしかしたら、
男の子は事件に巻き込まれているのでは?
そう思ったHさんはの子にさらに質問しました。
「今どこにいるの?そこから何か見える?」
そう尋ねると、男の子は「30が見える」と答えました。
その瞬間、Hさんの脳裏にとある映像がよぎりました。
山に続く道で、そこには速度制限30キロの標識があるのです。
直感でそこに男の子がいると思ったHさんは
「わかった。そこで待ってて」
と男の子に伝えて電話を切りました。
脳裏に浮かんだ場所は車で30分程度の場所です。
Hさんは運転しながら
「でも、あそこに電話ボックスなんてあったかな?」
と疑問にも思っていました。
やがて、目的の場所に着くと、
道の真ん中にポツンと子供の靴が落ちていました。
これは電話の男の子の物だと
Hさんは直感し、男の子を探しました。
「迎えに来たよー」
と声をかけつつ、周囲を探すと
茂みの中に黒いごみ袋を見つけました。
ゴミ袋は膨らんでいて、
確実に中にナニかが入っているのがわかりました。
それを見た途端、
Hさんは強い悪寒を感じて慌てて車に戻りました。
そのまま電話ボックスのあるところまで
車を走らせ警察に通報しました。
「不法投棄物がある」と。
後は警察に任せればよい。
もう、自分の出る幕ではないと
Hさんは思って、その日は家に帰りました。
翌日、新聞やニュースをチェックしても
Hさんの予感を裏付けるものはありませんでした。
喫茶店のお客さんの話にも乗らず、
Hさんは「あぁ、あのゴミ袋は本当にただのゴミだったのか
」と考えました。
それから2週間ほど、なにもなくHさんも夜の電話のことを忘れていきました。
そんな夜。
いつものように喫茶店の閉店処理をしていると
店の電話が鳴りました。
Hさんがいつものように電話に出ると、
あの日の男の子の声が聞こえました。
「どうして開けてくれなかったの?」
それから、Hさんが閉店後の電話に出ることは無くなったそうです。
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