あれはもう15年ほど昔のことです。
私がまだ華やかな女子大生だった頃です。
おっと、自分で言うようになるとは、年齢を重ねた証拠ですね。
さて話題を戻しますと、県外から大学へと入学した仲間通し、
毎日がお祭り騒ぎの如く、キャッキャキャッキャと満喫していました。
そんな中、残暑の9月始め、仲良し5人組の中の1人、
人一倍怖がりのお嬢さんタイプのYちゃんの誕生日パーティーを私のアパートで開催しました。
全員を妹と呼び可愛がってくれる男性の先輩も駆けつけてくれました。
先輩は唯一、大学のあるいわき市が地元の方でした。
美味しいものを食べ終えて、ゲームやらおしゃべりが一段落し、気がつけば夜中の12時も回っていました。
しかし、若さもあり、一人暮らしということも踏まえ、いつも通りオールナイトな雰囲気です。
すると、誰からともなく、「ドライブ行きたーい」との提案に、
「よっしゃ、君たちに、いわきの海を案内してやるよ」との先輩の声です。
ワイワイと出発しました。途中のコンビニで花火を買い込み、初めての道にウキウキしました。
突然、先輩は「いわきのトンネルは霊が出るところだらけだよ」と冗談めかして言いました。
私は、「霊感とか全然ないけど、通りたい通りたい」と便乗しました。
Tちゃんも「気になるね、もっと詳しく聞かせて」なんて笑います。
主役のYちゃんだけが耳を塞いで「本当にやめて」とムッとしています。
Kちゃんは霊感が強く、驚きも怖がりもせず。
実際、通り道だからといくつものトンネルを潜りましたが、何も起こりませんでした。
そうしているうちに、海辺へ到着しました。
花火が大好きなYちゃんの機嫌も直り、砂浜へGO。
みんな元気に仲良く遊び、街灯もない真っ暗な波を見つめました。
まったりとした、静かな時間も心地よく、しばらく思い思いの物思いに耽りました。
私は、ふと地元の海を思い出し、残してきた幼なじみを思い浮かべてしんみりとしていました。
沈黙を破るかのように、先輩が全員に掛け声を掛けました。
それぞれに軽めの後片付けの物を持たせて、数メートル先の「断崖の洞窟見てるか」と。
歩いて、いよいよ目の前に迫ると、中も見れるとの会話に、怖がりのYちゃん以外は興味津々です。
私は、ここぞとばかりに先輩と中を覗きに入る提案をしました。
さすがのTちゃんもKちゃんも呆れぎみ、先輩だけが、「わがままな妹だ、行ってやるよ」と微笑みました。
中に入り込み、「暗すぎて何にも見えないじゃん」とがっかりしていると、
遠くからYちゃんが心配しすぎて「やめてよ」と泣き叫ぶ声が聞こえました。
今日の主役を泣かせるなんて、しまったなあと反省し、
急いでYちゃんの元へ駆け寄り、謝り続けました。
「もう帰るなら許す」と言われ、先輩は気を取り直して全員へ
「そんじゃ、車まで全員で、よーいどん」と号令を掛けました。
駆け出して間もなく、私は左足首を引っ張られる感覚で
「もぉ先輩イタズラだめよ」と立ち止まりました。
しかし、前方から先輩の「何、呼んだ?」の声。
あれ?と後ろを振り返ると、私が最後尾だったのです。
木の枝でも落ちていたかなと明かりを照らしても何もありません。
その瞬間、背筋がゾクゾクと、鳥肌も立ちました。
何だったかは、今でもわかりません。