あれは、5年程前に体験した話です。
その日、当時付き合っていた彼氏と車で1時間弱程の距離にある海へ、
一緒に行く約束をしていました。
天気は晴天で、絶好の海日和でした。
海についてからは海水浴を楽しんだり、砂浜で日焼けをしたりしながら1日を海で満喫しました。
帰り道であんな体験をするとも知らずに。
海で遊び過ぎたのか、あっという間に時間は過ぎ、
もう日が傾いてきていました。
夕日を見てから帰ろうかと話し、
海辺の階段に座りぼーっと水平線を眺めていました。
海には、昼間あんなにいた家族連れの姿はなく、
賑わっていたのが嘘のように静かで、
波の音だけがしていました。
日が暮れてくると、海は昼間の顔とは別で、
なんだか少し寂しげで不気味な雰囲気さえ感じました。
沈んでゆく夕日を見たので、そろそろ帰ろうかと話し、
彼氏と車に乗り込みました。
その時、車の減った駐車場のどこかから、
なんとも言えない視線のような物を感じたのです。
その時、寒気を感じたのは私だけだったようです。
そして、彼氏の運転する車に乗り、帰り道を走りました。
既に日は落ち、辺りは真っ暗になっていました。
しばらく走り、大きな橋を渡るのですが、
そこであれは起きました。
彼氏と談笑していると、私の左手にふっと冷たい何かが当たったのです。
その感触は、あきらかに人の手のようで恐ろしい程に冷たいのです。
私は気が動転して、いきなり悲鳴を上げてしまいました。
驚いた彼氏は近くのコンビニに車を止め、
私をどうにか落ち着かせようとしていました。
バッグやシートベルトの金具ではない、明らかに冷たい、
それも女の人のような手だったと思います。
駐車場で感じた視線と寒気。
もしかすると、あの時私は得体の知れない何かを一緒に車に乗せてしまったのかもしれません。
これが、私が体験した怖い話です。