学生時代の話です。
私と友人は、部活動も一緒で、自転車通勤していました。
その日、学校は休みでしたが部活動はあったので、お昼を過ぎて部活が終わると、
同じ道を2人自転車で走っていました。
暫くすると、その坂道の途中を、明るく笑い声をあげながら二人の男女が寄り添って通っていきました。
それは男性のほうが年が上で親子のようにも見えましたし、年の差のあるカップルのようにも見えました。
少し長い坂道で、私たちは「仲良さそうだね」と顏を見合わせました。
しかし、ふいについさっきまでの笑い声が消えたのです。
「あれ、どこか曲がっていく道でもあったかなぁ」
と思いましたが、特にその日は気にすることもなく、友人とも楽しく過ごして帰りました。
それから半年くらい経って、再び私たちは二人して明るい陽射しの中をおしゃべりしながら自転車を漕いでいました。
すると、前と同じように男女二人が笑いあいながら歩いていくのです。
以前と同じ光景に、なんだか違和感を覚えた私は、ついそれを目で追ってしまっていました。
注意して観察すると、二人の服装は、ちょっと古臭い感じもしする、
そんなことを思っていると、本当に突然、二人の姿を見失ったのです。
あたりはまだ明るいのですから、消えた、というのが信じられないことでした。
そして、友人もまた、同じ光景を見ていたのです。
私たちは同じように気になって、ひょっとしたら自分たちの知らない狭い間がり角でもあったのかもしれないと思って探索しましたが、そんな道も場所もありません。
今でこそ、コンビニや喫茶店ができて新たな道もありますが、当時はただの一本の坂道なのです。
急に、私たちはこわくなってしまいました。
陽の光降り注ぐ中を消えてしまった二人が、実際は幾つくらいの年齢だったのか、
顏を見ていませんが、もし見ていたら、もっと怖い体験だったかもしれません。