私の家系
私の父は幼い頃から霊感が強く、何人か兄弟がいますが、私だけその感覚が遺伝してしまいました。
父ほどではありませんが、いるのがわかるというか、霧のような形で見え、何故か感情などはダイレクトに伝わってくるんです。
あの感覚はまさしく第六感で、上手く言葉では表現できない感覚です。
そんな私のいくつもある体験談の一つです。
水場に霊は集まる
昔から霊がいるところは決まっています。
空気が溜まるところ、水が溜まるところ・・・今回はその水に関するお話です。
私はよく”連れて”来てしまうので、意識的にそういう場所は避けていたんです。
でも、実際の水だけではなく、”水商売”、いわゆる歓楽街と呼ばれるところも何故か集まりやすいんです。
店を開けた瞬間に、この店にはいられない、そういう事も何度かありました。
でも、付き合いでよく遊びに行っていた時に体験した話です。
壊されない廃墟
私はゲイで、良く新宿二丁目に飲みに行っていました。
大体朝まで飲むので、何件かはしごするんですけど、その日は少し酔っていて、友人達と移動中に慣れない通りに入ってしまいました。
大通りからそんな離れていないその通りには、何故かとても寒く、私はすぐに違和感を感じました。
しばらくすると丁度道の角に不自然な廃墟があったんです。
5階建てくらいで、正直夜だったので、廃墟かどうかわからないんですけど、ビルの入り口には鎖と南京錠がされていました。
友人達が面白がって、その廃墟を開けようとしたんです。
「駄目だよ!!」
と言おうとした瞬間です。
一気に悪寒が走りました。
ふとビルを見上げると、4階くらいの道沿いの窓に、確かに人がいたんです。
くたびれたスーツを着たおじさんでした。
お前だな
はっきり見えてしまいましたが、それが”人”ではないことがすぐわかりました。
そして経験上、はっきりみえるのは不味い時なんです。
私について来ようとしている時か、”それ”が物凄く怒っている時・・・その時は後者でした。
酔ってふざけている友人達を力ずくで止めようとしましたが、何だか様子がおかしいんです。
異常に中に入りたがろうとしていて、その行動は興味の域を超えていました。
本当にまずい、と思い、深夜ですが、父に電話し、助けを求めました。
父に言われた、祝詞のような言葉を繰り返し唱えていたら、
少しずつ友人達も正気に戻り、その場を離れようとし始めたんです。
ホッと胸を撫で下ろした時です、父が真剣な口調で言ったんです。
「お前が気を付けろ」
そう言い電話を切られ、よくわからないまま帰ろうとした時です。
耳元ではっきり聞こえました。
「邪魔したのは、お前だな」
その廃墟には、以前は飲食店がいくつか入っていたようですが、とある飲食店で殺人事件があり、それ以降お店が入らず、何故か取り壊しもされていませんでした。
元々有名なようで、昼間、改めて建物を見に行きました。
あの時はわからなかったんですが、絶対にあのビルは入ってはいけません。
窓中の窓から、人ではないものが見えました。
あそこは既にもう、この世ではないのかもしれません。