これは私の父親に聞いた話です。
父親が生まれたのは戦後間もなくの事で、その頃は兵隊さんが病院に沢山入院していたそうです。
そして輸血には、まだまだ血液が足りない時代でした。
その頃に実際にあった話です。
ある病院の病室、そこは8人部屋でした。
夜は癒えない病気からか、疲れて皆ぐっすりと寝入ってしまうのですが、
Aさんは(仮名)その夜はなんだか眠れずに目が冴えてしまっていたそうです。
Aさんは窓際の端に眠っていたそうですが、ドア側にいたBさん(仮名)は夜中に病室を出ていったそうなのです。
あくる日もあくる日も、その夜中の出来事は続きました。
「あいつ真夜中に何処に行くんだろう。」
AさんはBさんの行動が気になって仕方ありません。
もし明日Bさんが夜中に同じ行動をしたら、明日こそは付いて行ってみよう、そう決心したのです。
あくる日の夜中、Bさんがいつものようにベットから抜け出すと早速Aさんも跡をつけました。
スリッパの音は響くので素足で後をつけました。
ピトピトピト・・・足跡が不気味に感じました。
「あいつ何処まで行くんだろう。」Bさんは何処までも何処までも迷わず進んで行きます。
たどり着いたのは、地下の血液が保存して有る部屋でした。
「あいつ何をしているんだろう。」暗くてよく見えません。
Aさんはもう少し近づき目を凝らしました。
「あっ・・・」思わず息を呑みました。
Bさんは血液を飲んでいたのです。
Bさんの口の周りは血で真っ赤でした。
驚いたAさんは微かに物音を立ててしまいました。
「誰だ!!!」
Aさんは急いで病室に戻りました。
そしてガタガタ震えながら布団に潜り、寝たふりを続けていました。
Bさんが病室に戻ってきました。
Bさんは一人づつ一人づつ、病室に眠る足の裏を触っています。
「何故だ?あいつは何をしているんだろう・・・そうか!
今まで後を付けた奴を探しているんだ、廊下を歩いていたから、
後を付けた奴の足の裏は冷たいからだ」Bさんの行動の訳を知りゾッとしました。
また一人また一人とBさんは足の裏を触っていきます。
4人目、5人目、6人目・・・次は俺だ、相変わらず足の裏は冷たいままです。
触られたらバレてしまう。
しかし、BさんがAさんの足の裏を触ることは無かったそうです。
Aさんはいつの間にか眠りに落ちてしまいました。
翌朝、ベットにBさんの姿はありませんでした。
その日以来、Bさんの姿を見ることは有りませんでした。
あの日の夜、Bさん自身のを除く6人の足の裏が冷たく無かったと言うことは、既に後を付けたのはAさんで有ると分かっていた事になりますよね。