私が通っていた高校の近くに、阿品公園という大きな公園があります。
その公園は普段は子どもを遊ばせるお母さんやランニングコースを走る人、
高校生などがたむろする普通の公園です。
実はその公園は県内有数の自殺名所でもあります。
何年かに一度ずつくらい公園にある大きな木で首を吊って自殺してしまう人がでてしまうのです。
とはいえ高校の近くで大きな公園と言うとそこくらいなので、
高校生が集まるにはちょうどいい場所でもあります。
ある夏のことです。
同じ高校に通っていた姉がクラスの仲の良いメンバーで手持ち花火をすることになり、
メンバーの家から中間地点である阿品公園で行われました。
普段は出来ない夜の遊びに盛り上がったらしく、
10時ごろになってから母の携帯に迎えに来て欲しいと連絡が入りました。
迎えに行く母の車に私と弟が同乗しました。
我が家が一番離れていたにもかかわらず一番乗りで到着したようで、
姉は6人くらいの友人と公園の入口で話をしながら待っていました。
公園の入口は植え込みを境に二手に分かれた緩やかな階段で、
友人たちは左右に別れて階段に一段ずつに立って車に乗り込む姉を見送ってくれました。
乗り込んだ姉に私はまず
「たくさんの人数で花火したんだね。いつもの仲良しの3人でしたんだと思ってた。」と話しかけました。
姉は怪訝そうに「何人だと思ったの?」と問いかけて来ました。
右に3人、左に3人の男女が手を振って見送ってくれていたように見えたのでそう伝えました。
すると母が驚いて「もっといたでしょう?7.8人は居たよ。」と言い、
弟は「4人くらいいた様に見えた。」と言いました。
見送りを確認した3人の見えていた人数が全部違っていたのです。
実際には何人居たのかというといつもの姉と仲良しメンバー3人で花火をしていたらしく、
見送りをしてくれたのは女の子が2人だけだったそうです。
人数も違うけど、男性なんてそこにはいなかったそうです。
あの時に見送ってくれた人達は誰だったのでしょうか?
母には見えて私には見えない、私には見えて弟には見えない誰かがそこにはいました。